一緒に長く過ごせば
第一印象は変化していく

 ある友人は、イタリア料理のレストランの受付係をしていました。そこで働き始めたとき、シェフの1人が彼女をデートに誘いました。彼女にはその気がなかったので断りました。シェフは彼女の答えを尊重し、職場の同僚として仲良くなりました。

 彼女の勤務時間が終わると彼が彼女を家まで車で送りました。レストランの営業終了後に、他の同僚たちと飲み明かすこともありました。

 彼が最初に彼女を誘ってから6カ月がたったある晩、車の中で彼女から彼にキスをしました。彼は驚きつつも喜びました。その週末に2人はデートに出かけ、いまでは結婚して2人の子どもがいます。

「最初は何も感じなかったの」とその友人は言いました。「けれど、私の中で彼の存在がだんだん大きくなっていった。思いが募るのに時間がかかったけど、いまでは彼なしの人生なんて考えられないわ」

 この手の話はよくあります。結婚したカップルは、かれらの初デートが(あるいは2回目のデートも)どれだけ悲惨だったかを嬉しそうに話してくれます。その話の教訓は明らかです。恋の火花は成長するものだということ。最初はいまにも消えそうな小さな火かもしれません。それが燃え上がる前に吹き消してしまうと、末永く続く愛の炎で自分を温めることができなくなってしまいます。

 数年前、心理学者のポール・イーストウィックとルーシー・ハントがこの現象を研究しました。学期の最初、同じクラスのストレートの男子学生とストレートの女子学生を対象に、互いを魅力度でランクづけするよう頼みました。その結果、多少の差はあるものの、どのクラスメイトが魅力的かについて大方の意見が一致していることがわかりました。この第一印象にもとづく最初の評価は、つがいとしての価値(Mate Value)として知られています。

 3カ月後、学期の終わりに研究者らはふたたびクラスメイトを評価するよう学生に頼みました。学生らは互いをよく知るようになっており、スコアには前回よりもばらつきが見られました。この新たなスコアは、独自の価値(Unique Value)、つまり、いっしょに時間を過ごしたあとにその人をどう思うかを反映したものです。