「1ドル100円程度」が長期の均衡値、金融政策と投機が異常な円安を生んだPhoto:PIXTA

2022年以降の円安の原因は金融関連変数
購買力平価より円安は歴史的に異例

 2022年以降、続いていた急激な円安は、日本銀行の7月利上げを機に円高方向に向かい始めた。

 為替レートがこれからどうなるかに、多くの人が強い関心を持っている。なぜなら、為替レートは消費者物価や企業利益に大きな影響を与えるからだ。

 日経平均株価の暴落を引き起こした主要な原因は、為替レートの円高への移行だったと考えられ、そしてこの転換を引き起こしたのは、実体経済の変化ではなく、金利差の予想や円キャリー取引などの金融関連変数だった。

 もともと急激な円安は、アメリカの金利引き上げに日本がまったく追随せず、マイナス金利を継続したために日米金利差が開き、円キャリー取引という投機取引が増大したためだった。

 だがこうした金融関連変数ではなく実体経済を反映した購買力平価による為替レートは1ドル100円程度だ。

 今後、そこまで円高に戻ることはあり得ないと多くの人が考えるだろう。だが市場レートが購買力平価より円安になるのは歴史的に見ると、むしろ異例のことなのだ。