2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

「地獄」のような人間関係を、一瞬で「天国」に変える方法がある

 先日、あるところに招かれ、数十人の方の前でお話をする機会がありました。

 その後、20人ほどで夕食会があったのですが、食事の最中に、参加者のひとりからこんな質問がありました。

「さきほど、『嫌な人や、嫌なことは存在しない』とお話しされていましたが、私の会社には、『感情的で、自制心がなく、気分屋で、横暴で、すぐに威張ったり怒鳴ったりする上司』がいます。こんな上司でも『嫌な人』ではないのですか?」

 私は、次のように答えました。

「嫌な人、嫌なこと、嫌な現象というのは存在していなくて、自分がそう決めつけているだけではないか、と私は思っています。今の上司の話も、2つの面から『嫌な人』ではないのかもしれません。ひとつは、感情的で横暴な性格を持つ方でも、それを上回る長所を持っている可能性があること。もうひとつは、自分にとって『好ましくない発言』をする人は、『こんなふうに、うぬぼれたり、傲慢になったり、自己中心的になってはいけない』ということを教えてくれる素晴らしいアドバイザーなのかもしれない、ということです。そう思えば、その上司は感謝の対象になるのではありませんか?」

 ですが、その方は、私の答えに納得しなかったようで、「こんな人もいます、あんな人もいます、こういう人もいます」と、自分が「ひどい」と思う人を次々と挙げはじめたのです。おそらく、30分以上は話し続けていたと思います。

 彼の話が終わったとき、私が笑って、「あなたはもしかしたら、嫌な人を1000人挙げられるのではありませんか?」と問いかけると、彼の返事は、「1000人どころか、2000人でも挙げられます」でした。

 私が「そんなに、まわりにいる人が『嫌な人』ばかりでは、地獄のような日々ではありませんか?」と聞くと、2、3秒考えてから、「そうですね、まったくの地獄です。人生は楽しくないし、苦痛です」と答えました。

 この男性にとって、「嫌な人」や「嫌いな人」が数人であれば、相手の問題かもしれません。ですが、1000人、2000人となれば、この人の「見方」自体の問題ではないでしょうか。

 まわりにいる人たちの「あら探し」「嫌いなところ探し」をしている以上、その人のまわりには、「嫌いな人」「嫌な人」の集団しか存在しないことになるでしょう。

 まわりがみな「嫌な人」だとすれば、気を許すことも、楽しく語り合うこともありません。いつも不機嫌で笑顔のない生活は、それこそ「地獄」にほかならないと思います。

 ところが、「『嫌な人』が存在しているのではなく、自分が決めつけているだけ」と認識できれば、その瞬間に地獄はなくなるでしょう。

 地獄を生み出した原因は、「自分の見方」であり、その見方を変えれば、問題は一瞬で解決すると思います。

「この人には、こんなによいところがあった。こんなに素晴らしい面もあった」と思うことができたら、まわりの人がみな「よい人」になり、「よい人」に囲まれている自分は、とても「幸せ」に思えるでしょう。

 どうやら「天国」も「地獄」も、自分の心の中に存在しているらしいのです。もしかしたら誰でも一瞬にして「地獄」を「天国」に変えることができるのかもしれません。