資産価値が上がる前提での購入は「勧めない」

 また、ペアローンを組む人々の多くが念頭に置いているのが、物件の資産性だ。首都圏の新築マンション契約者を対象にした調査(リクルート「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」)によれば、住宅の購入理由(3つまでの限定回答)は「子どもや家族のため、家を持ちたいと思ったから」が36%と最も高いが、次いで32%を占めるのは「資産を持ちたい、資産として有利だと思ったから」だ。

 だが、有田さんはこうした傾向にも「リスクもよく考えて」と釘をさす。

「資産価値が上がる前提で、物件を買うことはお勧めしません。投資的な発想と、自分が住む家とは、分けて考えたほうがいい。住宅は投資ではなく、『そこで安心して幸せに暮らすために買うもの』で、購入にかかる費用はそのためのコストと割り切って考えるべきです」

低金利時代に不動産価格は上昇する傾向

 前出の井出さんも、「安定を求めてマンションを買っても、この先、それがリスクになることも十分考えられる」と指摘する。これまで住宅ローン金利が低く維持されてきたが、今後は上がる可能性もある。

「ここ10年ほどの傾向だけを見れば、『マンションの資産価値は下がらない』と考えがちですが、そうとは限らない。過去を見ても、低金利時代に不動産価格が上昇し、金利を上げる際にこの動きが逆転する傾向にあります。遠くない将来、今の状況と全く逆の循環になってもおかしくない」(井出さん)

 安易にペアローンに飛びつくのではなく、慎重に検討したほうがよさそうだ。

 では今、平均的な所得の層は、どんな物件を買っているのか。年代別のローンの組み方のコツと併せて、次回の記事で解説する。

松岡かすみ(まつおか・かすみ)
1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

AERA dot.より転載