「あなたの会社はZ世代に嫌がられるような採用活動をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与さが開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・一部編集して紹介します。

「エントリーシートはいりません」→キーエンスの採用方針がスゴすぎてぐうの音も出なかったPhoto: Adobe Stock

予算が限られていてもできる3つのこと

「いい人が採用したい。でも、予算がない……」これは私が耳にタコができるほど聞いた、企業の経営者、人事、採用担当の悩みだ。

 結論を書くと、予算はなくても、十分やれることはある。まずは安心してほしい。

 採用で最も重要なのは「企業イメージ」である。このことは、本書で何度も述べたメッセージだ。

 では、現場から企業イメージをつくるときに重要なのは何か。それは、「インターンシッププログラム」「自社採用サイト」「会社説明資料」の3つだ。

 この3つのコンテンツは、企業イメージをつくる上でコアとなる。なぜコアとなるかというと、一人の候補者に対して接触時間が長く取れる施策だからだ。

 インターンシップは、半日から数週間の時間を確保できる最長の施策。

 WEBコンテンツは、数秒から数十分の時間を幅広い層から獲得できる施策。

 会社説明も数分から数十分の時間を獲得できる。接触する時間が多いほど、ファンになってもらえる機会や施策が単純に多くなるため、コアの体験を設計する上で重要になる。

「候補者がコンテンツに接触する機会=企業イメージをつくれるチャンスの数」と捉えるとわかりやすいだろう。では、具体的に何を意識すればよいのか、また何がダメな施策になり得るのだろうか。

インターンシップ:ポジティブな感情を作り出せ

 インターンシップで学生がポジティブな感情を持ちやすい瞬間にはいくつかの共通点がある。キーワードは「学び」「驚き」「つながり」である。

 ひとつ目は「学びがあること」。インターンシップに参加する前と後で知識やフレームワーク、視点が新たになっていること。

 2つ目は「いい面での驚き」があること。参加者は何かしらの期待値を持ってインターンシップに参加している。事前に参加者の期待値を把握しておき、その期待値を超える要素を設計すること。たとえば、参加者が金融業界の実態について知りたいと思ってインターンシップに参加している場合、教科書やWEBサイトには載っていないような裏話や小ネタ、現場のリアルな体験を語ることで、期待値を超えやすくなる。

 最後の3つ目は「横のつながりがあること」。毎年、インターンシップの満足度に大きな影響を与えるもののひとつに、参加者同士でのつながりが持てること、いわゆる、就活仲間を得られることがある。

自社採用サイト:共感ポイントをつくれ

 次に、自社サイト用コンテンツは、「共感ポイントができるだけ多く存在していること」(共感)と、「求職者の疑問に網羅的に答えていること」(安心)の2つが重要になる。

 例えば、キーエンスの新卒採用サイトには「エントリーシートは不要」と明記されている。

 サイトには、その理由も書いてある。

「キーエンスの事業はBtoBであり、学生の皆さんがキーエンスに触れる機会は、多くなかったと思います。そんな中で、キーエンスへの志望動機を考えて練り上げることは大変な作業であり、皆さんに多大な時間と労力がかかってしまうのに対して、そこから私たちが得られる皆さんの情報はあまりないからです」
※キーエンス新卒採用サイトより)

「就活で「志望動機」に辟易している学生には、強く心に刺さる方針、施策だろう。

会社説明資料:「盛りだくさん」にするな

 最後に、会社説明資料は、自社のことをどのように紹介するのかが論点になる。基礎的な情報を含めるのはもちろん、直感的なデザインや今の時代に合ったクリエイティブトーンも効果的だ。また、あえて変化している点を盛り込むことで、企業として最新の情報を伝えようとする姿勢を強調することができる。

 このようなコンテンツをつくる際、「自社の魅力を伝えたい」と盛りだくさんになってしまうことも多い。最後のチェック段階では必ず、「この情報は求職者(特に若い感性を持つ学生)が知りたいか、また刺さるのか」という観点での情報の取捨選択を行うべきである。