定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。

【税理士が教える】老後資金を失う可能性が高い「やってはいけない投資」5選!Photo: Adobe Stock

鉄則は「理解できないことはしない」

 本書でおすすめしている、金利が高い「退職金専用定期」は、使える期間が限られていて、おおむね退職後1年以内です。実際は、その先の運用期間のほうが長いので、その後どう資産運用していくかが大切です。慣れない投資に手を出して、退職金を減らしてしまう人は、大勢います。ここでは、私が「退職金を減らす可能性が高い」と思う投資をあげておきたいと思います。

 いずれにしても、資産運用をする上での鉄則は「理解できないことはしない」ことです。

利回りが3%以下の不動産投資はNG

 退職金でまとまったお金が入った人が走りがちなのが、不動産投資です。不動産業者も「不動産投資で自分年金を作りましょう」などという営業トークをしてきますが、不動産投資はそう簡単ではありません。

「不動産投資」で、一番やってはいけないのは、利回りの悪い不動産を買うことです。利回りとは不動産購入価格に対して、年間いくらの利益を上げられるかの指数です。2000万円で買った不動産が、年間60万円の家賃を稼げば「表面利回り」は3%です。でも実際は、固定資産税や借入利息、管理費や修繕費などがかかるので、「実質利回り」はさらに低くなります。

 不動産投資をやってもいいといわれる「表面利回り」の目安は6%以上ともいわれていますが、現在は不動産価格が高騰していることもあり、3%程度やそれ以下の利回りでも買ってしまう人も多くいるようです。でも、これはとても危険です。

 表面利回り3%では、ローンの利息や、管理費、固定資産税など払っていくと、手取りは期待できません。ひどい場合には、ローンを返すために預金を取り崩す人もいます。

 もちろん、不動産投資から得られる利益には「家賃による利益」だけではなく、「買った金額よりも高く売れた場合の売却益」もあります。ただ、不動産価額がバブル並みに高くなっている今のような時期は、家賃による利回りが低くなるだけでなく、売却益が出る可能性も低くなりますので、不動産投資には不向きな状況であると考えたほうがいいでしょう。

手数料の高いファンドラップと投資信託

 金融機関が力をいれてすすめる商品の共通点は、「手数料が高いこと」です。前項であげた定期預金と抱き合わせの投資信託やファンドラップもそうですが、大手金融機関が力を入れてすすめるものの手数料は必ず確認してください。

 手数料には、購入する時にかかる手数料と運用している期間中にかかる手数料がありますが、手数料2~3%なんていう商品もざらにあります。たとえ運用利回りが2%出たとしても手数料を2%以上取られていたら、元本割れしてしまいます。投資信託やファンドラップなどの運用商品はプロに運用を任せるわけですから、手数料ゼロというわけにはいきませんが、1%を切るような手数料のものもたくさんありますし、中には、0.1%を切るものだってあります。

 手数料が安ければいいとはいいませんが、手数料が高ければ儲かる可能性は低くなります。手数料が低くてよいパフォーマンスを出す商品もあるのです。営業マンの言いなりになって高い手数料のものを買うことは、やめていただきたいと思います。

毎月分配型の投資信託は危険

 老後の定期収入の助けになると考えるのか、「毎月配当が出るタイプの金融商品が好き!」という人は多いようですが、資産を増やすという意味ではこれもおすすめしません。

 毎月分配型の商品は、約束した配当を出すために運用で賄えなかった分は、元本を削って払いだします。たとえば、1000万円投資をして、毎月5万円ずつ配当を出すという約束をした商品の場合、運用がうまくいかなくて3万円しか稼げなかった時は、足りない分の2万円を元本から出しますので、翌月は1000万円ではなく、998万円を運用することになります。1000万円で5万円の運用益が出せなかったことを考えれば、998万円ではさらに出しづらくなり、元本はどんどん減っていく可能性があるのです。

 投資の基本は複利です。100万円で1万円の運用益がつくなら、その1万円を運用対象にすれば今度は101万円を運用することになるので運用益は増えていくのです。

理解できない保険や投資商品

「退職金といえば、これ!」といわれるほど金融機関の人がすすめにくる商品の一つに「外貨建て保険」があります。金融機関にとって客におすすめしやすいのは、利回りがよくて元本保証のもの。「外貨建て保険」はズバリこれに当てはまるのです。でも、利回りがよくて、元本保証できるのは、日本円よりも利回りのいいドルなどの外貨建てだから。ですから、元本保証というのは、外貨建てでの話。為替相場次第で、日本円では元本割れしてしまうこともあるのです。これを知らずに大金をつぎ込んで困った人がたくさんいるとか……。

 はっきりいって、トクしかない運用商品なんてこの世にありません。そのことを念頭において、わからない時には「この商品のリスクはなんですか?」と正直に聞きましょう。営業マンがわけのわからない説明をしても納得いくまで聞いてください。年を重ねると、「わかりません!」と言うのが恥ずかしいと思いがちですが、聞かぬは一生の恥です。とにかく「理解できないものには、お金を出さないぞ!」という心意気で、退職金を運用してほしいと思います。

*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。