ビル・ゲイツがしている「使える人材を見抜く法」

 新たに長期的研究を行うにあたり、私は世界最大の慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」に支援を求めることにした。まもなく、ゲイツ財団が大学中退率の高さに大きな関心を持っていることがわかった。

 現在、アメリカの短期大学および大学の中退率は、世界でもっとも高いレベルにある。授業料の上昇に加え、学資援助のシステムが複雑きわまりないのがおもな原因だ。さらに、学力が著しく不十分でついていけないという別の問題もある。

 しかし、経済的に厳しく、SATのスコアが低い生徒たちは、誰もがみな中退してしまうわけではない。どんな生徒ならがんばって卒業し、学士号を取得できるのか。どんな生徒は卒業できないのか。それを予測するのは、社会科学においてもっとも大きな懸案事項のひとつであり、いまだに納得のいく回答を出した者はいない。

 ビル・ゲイツとメリンダ・ゲイツとのミーティングで、私は自分の見解を述べる機会に恵まれた。そこで私は、高校のときに大変なことを最後までやり通すことを学ぶのが、おとなになってから大変なことをやり遂げるために、なによりの下地になると思うと述べた。

 すると、そのあとの会話のなかで、ビルも以前から、才能以外の能力の重要性を高く評価していたことがわかった。

 彼が以前マイクロソフト社で、ソフトウェアプログラマーの採用に、いまよりもっと直接的に関わっていたころには、選考試験の課題として、単調なトラブルシューティングにひたすら何時間も取り組む問題を出題していた。

 この試験で問われるのは、IQやプログラミングスキルの高さではない。それよりも、粘り強く黙々と問題に取り組み、最後までやり遂げる能力を試すものだ。ビルが採用したのは、課題を最後までやり遂げたプログラマーだけだった。