世界の心理学者が長年追求してきた「人生で成功するのに最も重要なファクターは何か?」がついに研究で解明された!ビジネスリーダー、エリート学者、オリンピック選手……成功者の共通点は「才能」でも「IQ」でもなく、もうひとつの能力「グリット」だった――。これまでの能力観・教育観を180度くつがえし、世界的ベストセラーとなっている『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』から、その驚くべき内容を紹介する。

性格研究プロジェクトでわかった「成功する人、しない人」の違い

頑張ってるのに「なぜか二流」の人はこの性格が欠けている

 1978年、科学者のウォーレン・ウィリンガムは「性格的特徴研究プロジェクト」の責任者を務めていた。青年期に見られる成功の決定要因を明らかにするための試みとしては、こんにちでも類を見ないほど野心的な研究だ。

 プロジェクトは非営利団体「教育試験サービス」(ETS)の資金提供によって運営された。ETSは、ニュージャージー州プリンストン市郊外の広大な敷地に本部を構え、統計学者や心理学者など1000名以上の科学者が、学業や仕事における成功を予測するためのテストを開発している。

 SAT(大学進学適性試験)やGRE(大学院進学適性試験)やTOEFLも、ETSが作成・実施しているテストであり、ほかにも全37科目のアドバンスト・プレイスメント・テストの作成・実施を行っている。

 つまり、「クリネックス」がティッシュの代名詞であるように、「ETS」は標準テストの代名詞なのだ。もちろん、標準テストを作成している団体はほかにもあるが、ほとんどの人は名称を挙げようと思っても、なかなか思いつかないだろう。

 ではそのETSが、標準テスト以外にどんな点を調べようとしたのだろうか?

 ウィリンガムをはじめETSの科学者たちは、高校の成績と試験のスコアだけでは、おとなになってからの成功を予測できないことを、ほかの誰よりも知り尽くしていた。実際、成績と試験のスコアがまったく同じふたりの生徒に、おとなになってから大きな差が表れるのは、よくあることだ。

 そこでウィリンガムが突きとめようとしたのは、「成績と試験のスコア以外に、将来の成功の決め手となる性格的特徴とはなにか」という問題だった。

 それを調べるため、ウィリンガムの研究チームは、数千名の生徒を対象に、高校の最終学年から5年間の追跡調査を行った。

 はじめに、各生徒の大学への入学願書、アンケート調査への回答、作文などの本人が書いた文章、インタビューの記録メモ、学校の成績表などが収集された。つぎに、それらの情報にもとづき、100項目以上もの個人的な特徴について、数値による段階評価が行われた。

 たとえば、親の職業や社会的地位などの家庭環境や、将来の職業として本人が興味を持っていることや、大学への進学希望、学生時代に達成したい目標など、さまざまな項目が網羅されていた。