「生前贈与」は、相続税対策として最もよく知られた方法だ。ただ、断片的な知識で活用すると、相続対策にならないどころか、余計な負担を増やしてしまうことにもなりかねない。近年のルール改正も踏まえて、押さえておきたい注意点を解説する。(税理士・司法書士 碓井孝介)
相続税対策が水の泡に!?
押さえておきたい贈与の「新ルール」
相続税対策の定番といえば、「生前贈与」だ。相続税は、遺産の額が大きくなればなるほど税額も大きくなる累進課税であるため、生前に親族に財産を贈与すれば将来の遺産額が減り、相続税額もそれに応じて減る。
しかし、生前贈与の方法によっては将来の相続税額の削減にならないことがあるばかりか、余計な税負担が生じることもある。このため、注意が必要だ。
生前贈与に関しては、2500万円までは贈与税がかからず、相続時に贈与分を相続財産に含める「相続時精算課税」制度があるが、今回は「暦年贈与」を利用する場合について、注意点をお伝えする。
もしも、生前贈与に対して全く規制をしないとすると、どうなるだろうか。例えば、亡くなる直前に生前贈与を行うことで簡単に相続税額を減らすことができてしまい、生前贈与を行わずに相続税を納める者との間に大きな不公平が生じてしまう。
そこで「一定の期間」において行った生前贈与は、相続税の計算において相続財産に加算(持ち戻す)することが義務付けられている。
その一定の期間は、これまでは亡くなる前3年間だった。3年よりも前に行った生前贈与は、相続税の計算からは除外できるという扱いだったのだ。
しかし、ルールの変更があり、2024年1月1日以降に行う生前贈与については、持ち戻しの対象になる期間は「7年間」となった。