相続税対策の“王道”として広く使われてきた生前贈与。そのルールが2024年から変わった。何も知らずに「毎年110万円」の生前贈与をそのまま続けていると損をすることも!? 特集『法改正で知らない間に損をしない!相続・贈与・実家の新常識』(全13回)の#1では、新ルールに対応した、生前贈与を活用した節税術の最適解を徹底検証する。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
相続税対策の“王道”生前贈与
2024年からの新ルールの最適解は?
毎年110万円を生前贈与する。相続税対策の“王道”とされる生前贈与のルールが、2024年1月1日から変わった。
相続税は相続財産が増えれば増えるほど税率が上がっていく超累進課税を採用している。そのため、相続税を節税する基本は、亡くなる前に相続財産を減らすことだ。
そして贈与税には年間110万円までの贈与ならば非課税となる基礎控除がある。そのため、「毎年110万円」を生前贈与することは“鉄板”の相続税対策として広く利用されてきた。
しかし、この節税術が24年から大きく封じられることになった。23年度の税制改正大綱で、相続税と贈与税のルールが65年ぶりに改正されたからだ。
余命宣告されてから生前贈与し、相続税を減らしたい。このような亡くなる直前に贈与して相続税から逃れることを防ぐためのルールはもともと存在していた。1958年度に作られた「持ち戻し」と呼ばれる制度で、相続開始3年前(つまり死亡3年前)以内の贈与については、相続財産に加算して相続税を課税するというものだ。
これが今回の改正で、24年1月1日以降の贈与については、加算期間が延長され、亡くなる「7年」前以内の贈与が相続財産に加算されるようになった。なお、相続4~7年前の贈与については計100万円の控除も設けられた。
例えば、亡くなる10年前から毎年110万円ずつ生前贈与した場合、従来は1100万円のうち3年間分の330万円が相続財産に加算されていた。しかし、改正後の現在は7年間分から控除の100万円を引いた670万円が相続財産に加算され、相続税の課税対象となる。つまりその分、相続税が増えてしまうのだ。
ちなみに、旧ルールが適用されていた23年12月末までの生前贈与については、加算期間は3年のままだ。そのため贈与から3年よりも長く生きれば節税できる。
こうした新ルールが始まったことを知らずに今まで通りの生前贈与を続けていると、思い通りの節税効果を得られず損をする羽目になる。一方、今回のルール改正では、相続税の節税に使えそうな新たな制度が導入されたほか、改正の対象外となったためにまだ使える贈与テクニックも残されている。
どのルールを利用するかで、例えば資産1億円の場合、節税額が200万円以上変わってくる場合もある。次ページでは、新ルールに対応した、生前贈与を活用した節税術の最適解を徹底検証する。