根気強くひとつのことを考えられない、寝ても疲れが取れない、よく目が霞む……。「老い」は気付かぬうちに少しずつあなたを蝕んでいく。老いを少しでも遅くしたいと願わない人などいないだろう。そこで、食事術や生活習慣といった「不老術」をアメリカの名医がまとめた本が誕生、NYタイムズベストセラーに選ばれ、エリック・シュミットといった数多くの著名人から絶賛を受けている。世界9カ国以上で刊行の話題作『医者が教える最強の不老術』より、内容の一部を特別公開する。

乱れたホルモンバランスを整えるための食べ物16選Photo: Adobe Stock

私たちが暮らす世界は
ホルモンバランスを乱す物質だらけ

 老化を加速させ、老化の病を引き起こす原因を1つだけ挙げるとすれば、それは糖とデンプン(特に小麦粉)、およびその結果として生じる代謝の混乱とインスリン抵抗性だ。

 何度も聞かされてうんざりしているかもしれないが、糖と小麦粉の除去は、健康を向上させて寿命を延ばすためにとることのできる最大の手段であり、それはホルモンや神経伝達物質だけでなく、他のあらゆるコアシステムにも好影響を与える。

 女性はホルモンバランスを整えることに特に注意を払う必要がある。なぜなら、私たちが暮らす世界はホルモンを攪乱する物質に満ちており、それが更年期障害、月経前症候群、女性のがんの誘発や悪化を招き、過剰なエストロゲンを分泌させるからだ。

 糖分の摂りすぎや、食物繊維の少ない食事、栄養不足、アルコール、外因性エストロゲン(殺虫剤、プラスチック、エストロゲンを模倣する環境化学物質など)、ストレス、運動不足はみな、ホルモンバランスを乱す原因になる。

 女性は、非遺伝子組み換えの伝統的な大豆で作られた味噌、納豆、テンペ、豆腐などの食品、亜麻仁、アブラナ科の野菜、そして食物繊維を多く食事に取り入れると効果が得られる。

 私たちが食べる物は、甲状腺機能にも影響を与える。甲状腺機能の低下は、グルテン、生のケールのスムージーの飲み過ぎ(生のアブラナ科の野菜は甲状腺機能を阻害するため)、亜鉛、セレン、ビタミンD、ヨウ素の少ない食生活が引き金になることがある。

 そのため、食生活に亜鉛(肉類、種子、ナッツ)、セレン(イワシ、ブラジルナッツ)、ビタミンD(卵黄、ポルチーニ茸、ニシン)、ヨウ素(海藻、魚)を豊富に含む食品を加えれば、甲状腺機能を最適化することができる。

 脳と神経伝達物質も、食生活から大きな影響を受ける。今では、脳機能に影響を及ぼす食物の力を認識する、まったく新たな精神医学分野が確立されており、スタンフォード大学には代謝精神医学科が、ハーバード大学には栄養・生活習慣精神医学科がある。

 食生活の変化が認知症に与える影響を実証した研究も少なくない(*1)。ケトジェニック食事法は、アルツハイマー病患者の認知機能と機能を改善することが示されているし(*2)、ハーバード大学の精神科医らは、ケトジェニック食事法により、統合失調症を寛解させている(*3)。

 糖分やデンプン質の多い加工食品を自然食品に置き換えるだけで、うつ病の治療に効果が出ることを示す研究もある。実際、これは対照群が摂り続けていたSAD食(Standard American Diet、標準的なアメリカの食事法)に比べて、うつ病の治療に400%も効果があることが示された(*4)。もしかしたら私たちは、自然食品に基づく食事法をGLAD食と名付けるべきかもしれない!

参考文献
*1 Rosenberg A, Mangialasche F, Ngandu T, Solomon A, Kivipelto M. “Multidomain Interventions to Prevent Cognitive Impairment, Alzheimer’s Disease, and Dementia: From FINGER to World-Wide FINGERS.” J Prev Alzheimers Dis. 2020 Jan 7(1):29-36; Isaacson RS, et al. “Individualized Clinical Management of Patients at Risk for Alzheimer’s Dementia.” Alzheimers Dement. 2019 Dec15(12):1588-1602.
*2 Broom GM, Shaw IC, Rucklidge JJ. “The Ketogenic Diet as a Potential Treatment and Prevention Strategy for Alzheimer’s Disease.” Nutrition. 2019 Apr 60:118-21.
*3 Norwitz NG, Sethi S, Palmer CM. “Ketogenic Diet as a Metabolic Treatment for Mental Illness.” Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2020 Oct 27(5):269-74.
*4 Dean OM, Hodge AM, Berk M, et al. “A Randomised Controlled Trial of Dietary Improvement for Adults with Major Depression (the ‘SMILES’ trial).” BMC Med. 2017 Jan 30 15(1):23. doi:10.1186/s12916-017-0791-y. Erratum in BMC Med. 2018 Dec 28;16(1):236.

(本原稿は、『医者が教える最強の不老術』からの抜粋です)