脳の老化を防ぐには?黒柳徹子が毎晩、寝る前にやっていることPhoto:SANKEI

脳を衰えさせずいつまでも若々しさを保つには、新しいことや苦手なことにも挑戦して脳にハラハラドキドキする刺激や緊張感を与えることが大切だ。高齢になっても脳を育み、元気に生きていくためには、日々どんなことを意識して生活すればいいのか。脳神経外科医の中冨浩文氏が解説する。本稿は、中冨浩文『脳は何歳からでもよみがえる』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。

「脳を育む」ために
日常的に行うべきこと

 脳を育むとは、あきらめずに色々な脳の領域をいくつになっても使うことです。脳のパフォーマンスを守るためには、新しいことをやってみることを心がけています。好きなこと、慣れていることはできてしまいます。

 たとえば、日本語ではなく英語を使う。同じことをするにもハードルを上げるなど、嫌いなこと、ためらわれることをいかに続けるかです。

 新しいことに3つ並行して取り組んでいると脳の老化を防げると言います。語学の勉強をしながら、手指を使うちぎり絵や折り紙を趣味として、家族と昔話を話す(回想法)といったことです。脳がハラハラドキドキするような経験を重ねることが大事です。

 また、同時に2つのことをすると脳内のかなり広いエリアが活性化します。運動しながら誰かとクイズをするというのは、認知症のリハビリテーションでおこなわれているれっきとしたプログラムです。階段昇降しながら隣の人としりとりをするというのが最初に発明されたリハビリテーションで、認知症のリハビリテーションに運動は欠かせません。

 最近はジムに通われている方も増えています。ルームランナーでテレビ番組を視聴しながらウォーキングやランニングをされている方は、ぜひアナウンサーの言葉をよく聞き取りながら歩いたり、走ったりしてください。あるいは番組の内容や出演者の話を帰宅後、家族に話すのもいいでしょう。

 能動的に頭を使うことが大事なので、自宅ならその場で足踏みをするステップマシンに乗りながら本を読んだり、耳をすませてラジオを聴くのでもかまいません。もっと手軽にできる方法として単純にお手玉をするのでもよいでしょう。両手を使いながら、お手玉を投げたり、つかんだりと、同時に2つのことをおこなうとよいです。

 わたしは少し特殊な例ですが、不慣れなことにチャレンジするという意味で手術の練習を利用しています。

 デスクの脇には、顕微鏡の下に、手をギリギリ入れることができないくらいの穴を開けた自作の箱が置いてあります。10センチメートル下にある人工血管を顕微鏡と器具だけで吻合(ふんごう)しなければなりません。

 2ミリメートルの血管同士でも、目の前に置かれれば縫い合わせることはそこまで難しくはありません。どうすればもっと手術の技量を高めることができるかを考えた末に、自分で練習台をつくりました。手が入りづらい状況で10センチメートル先の人工血管を縫い合わせるというのは昔は非常に難かったです。

 ところが、もやもやしたストレスに耐え続けながら練習していると、いつのまにか脳が切り替わって縫えるようになりました。