ドライバーを魅了する走りの鍵は4WD
高い技術で姿勢をハンドリングマシンに調律

 フェルッチォ・ランボルギーニが1963年に設立したランボルギーニ社は、1972年にスイス人のジョージ-アンリ・ロセッティに買収されて以降、さまざまな投資家や企業の手を経て、1998年にアウディの子会社になった。

 アウディといえばクワトロの名称で知られるフルタイム4WD技術を長年、磨き続けてきた自動車メーカーである。そこで「ランボルギーニも彼らの技術を得て4WDの技術開発に取り組み始めた」と考えるのが普通だろう。だが、実際は大きく異なる。

 ランボルギーニが世に送り出した初の4WDモデルは1993年デビューのディアブロVTだった。つまり、彼らはアウディに買収される5年前に、すでにスーパースポーツカーの4WD化を実現していたのである。

 それどころか、買収に際してアウディがランボルギーニ社内を調査した際には、その優れた4WD技術にアウディ側が驚いたという逸話が残っている。すなわち、アウディ傘下に入る前から、ランボルギーニは素晴らしい4WD技術を磨き上げていたのである。

 そうしたランボルギーニの4WD技術がアウディのサポートを受けていっそう加速したことは間違いない。

 彼らは4WDの圧倒的なトラクション性能だけでなく、近年はそのバツグンのスタビリティ性能を「より痛快なハンドリングを実現するため」にも活用している。

 一般的にいって後輪駆動より安定性が高い4WDは、後輪駆動ではスピンしてしまうドリフトアングルまで持ち込んでも、本来の姿勢に復帰しやすいことで知られる。

 ランボルギーニはこのポテンシャルを活用し、たとえオーバーステアに陥ってもそれを立て直す制御技術を確立。さらに、ここから一歩踏み出し、ドライバーがオーバーステアを期待していると判断すると、クルマ側がそれに必要な “きっかけ”を作り、あたかもドライバー自身がオーバーステアをコントロールしているような気分を体験させてくれるのである。

 チョイ濡れの富士スピードウェイで、私がレヴエルトを思い切って振り回せたのは、このような背景があったからなのだ。