しかし転機が訪れた。イーライリリーの糖尿病治療薬が肥満治療薬としてアメリカで承認された。日本でも2024年5月、肥満治療薬として厚生労働省にも申請した。この肥満治療薬の需要が供給に追いつかないとされる。だから工場新設計画の増額修正を迫られているらしい。

 日本でぼんやり暮らしていると、肥満治療薬の爆発的需要はあまり想像できず、「多少の需要はあるかな」程度だろう。しかし欧米を旅行した記憶を蘇らせると、またコロナ明け以降の西洋系旅行者のことを思い出してみると、肥満治療薬への渇望は大いに理解できる。飛行機で旅行するとき、座席をどうするのだろうかと、他人事ながら心配してしまうほどの人も少なくない。

長期投資のために重要なのは
企業や世の中を観察すること

 2020年ごろからイーライリリーの株価は上昇速度を増している。2024年5月末の時価総額は0.78兆ドル(123兆円)と、アメリカ製薬会社のトップである。確認できていないが、世界でも時価総額トップだろう。ちなみに日本の製薬会社の時価総額トップは第一三共であり、10.9兆円である。

 ここでエヌビディアとイーライリリーを取り上げたのは、それらの株式の買いを推奨するのが目的ではない。筆者が保有しているのかどうかも述べない。

 個別企業の事例を紹介するのは、ぼんやりとでもいいから企業や世の中を観察することが、長期投資のために重要だと言いたいだけである。