2024年に発表された小中学校における不登校者数は34万6482人。前年度から4万7000人以上増え、11年連続で増加して過去最多となりました。不登校は個人の問題ではなく社会問題です。本連載では、20年以上にわたり、学校の外から教育支援を続け、コロナ禍以降はメタバースを活用した不登校支援も注目される認定NPO法人「カタリバ」の代表理事、今村久美氏の初著書「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から、不登校を理解し、子どもたちに伴走するためのヒントを、ピックアップしてご紹介していきます。「不登校」という事象について考えるときに、本人へのケアという個人に着目した視点と、教育環境との相性や教育制度など、個人を苦しめている社会の側に視点をおいた考え方など、幾つかの視点があります。ここでは個人に着目した考え方の一つを本書から紹介します。
昼夜逆転にもいろいろな理由がある
不登校と昼夜逆転はセットで起こりがちです。
「みんなが学校に行く時間帯は罪悪感に苛まれる」「家族が起きている時間は、不登校を責められそうでつらい」などという気持ちから、あえて昼間に眠る子もいれば、単にゲームなどで夜更かしの癖がついてしまったという子もいるようです。
心配していることを伝えながら、まずはゆっくり気持ちを聞けるといいですね。
起立性調節障がいやうつ病など、病気が疑われる場合は医師に相談しましょう。
「役割」を与えたら解決した例も
深夜から朝にかけてゲームに熱中するようになった中学2年生のPくん宅では、Pくんが前からほしがっていたウサギをペットとして迎えました。
「ちゃんと朝起きてエサをやらないと、死んじゃうよ」と話したことで、「僕がしっかりしないとダメなんだ」という思いが芽生えて、昼夜逆転はあっさりと改善されたそうです。
動物を飼うことで不登校の子の状態が改善した例は他にもよく聞きます。
学校には行けないけれど、地元のスポーツ少年団の野球チームに所属していたQくんも昼夜逆転タイプ。Qくんには、野球チームのコーチがあえていくつかの役割を割り当てました。野球が大好きだったQくんは「俺が行かないと、みんなが練習できなくなってしまうから」と徐々に生活リズムを取り戻していったそうです。
この2つの事例は、自分の役割を認識できたことでうまくいったケースです。
ただし、これは心のエネルギーが回復期に入ってきた時期に、本人にとって「ストレッチゾーン」に当てはまることを選ぶのがポイントです。
*本記事は、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」から抜粋・編集したものです。