奇跡は自分のなかにある、だから生まれ変わりさえすれば、きっと人生の逆転劇を起こせるに違いない――。「やればできる!」と思考が変わる話題のベストセラーが日本に上陸。31歳、一度は人生をあきらめた著者が再起できたのは、古今東西の成功者たちが持つ「6つのマインド」にあった。3000冊を超える本を読み、抽出された「プラス思考」「決断力」「切実さ」「愚直さ」「謙虚さ」「根気」を武器に、一度しかない人生、「なりたい自分」になる方法を1冊に凝縮。新刊『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から「自分ならできる」と信じられるノウハウを紹介する。
今回は、本書と、『勉強が面白くなる瞬間』の訳者である吉川南氏にインタビュー。両作とも人生のどん底を味わった著者がどのように苦難を乗り越えて人生をつかみ取ったのかがわかるストーリー。共通点を紐解きながら、今話題の本の魅力に迫る!(取材・構成/ダイヤモンド社武井康一郎)
――『勉強が面白くなる瞬間』『勉強が一番、簡単でした』に続き、翻訳を担当していただきましたが、これまでの本は勉強法。今回の『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』は自己啓発寄りですが、いかがでしたか?
『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』には、日本から海外までいろいろな本が登場し、引用が多かったので、3ヵ月間くらい時間を要しました。
著者のチョン・ソンミンさんは、たいへんな読書家であることがわかりました。たくさん本が紹介されていて、本好きの方には、ブックガイドとしても読めるのではないでしょうか。
古今東西の本がまんべんなくあり、一読すれば、そのエッセンスがつかめることができるはずです。
また、全5章からなる本ですが、章ごとに独立しているので、どのページを広げても順番に関係なく読めるところがいいですね。
――韓国でベストセラーになりました。これまで多くのベストセラーの翻訳に携わっていますが、この本ならではの読みどころを教えてください。
「20代の頃、自堕落な生活をしてしまい、公務員試験を目指しながらも、ゲーム中毒になった著者が、どのように克服できたのか」ですね。
「なるほどな」と思ったのは、「公務員試験に合格したい!」――自分はそう思っていたのに、それは錯覚だった、と気づいたところ。「合格して出世」というのは、幻想に酔っていただけで、それは本当の夢には値しなかった――。
「幻想」と「妄想」と「本当の夢」、どう区別するかが、面白かったですね。
夢の実現のために、どれだけ時間を使っていたかを確認する。1日のすべてを投入するくらいじゃないと、夢とは言わない――そこが響きましたね。
――日本と韓国の社会背景との違いは、影響ありますかね?
韓国のほうが社会的に厳しい部分が多いでしょうね。大企業に入ればそれで安泰、ではない。年金も韓国のほうが厳しい。日本も危うくありますが、韓国はそれ以上に将来、期待できない、自助努力が求められる。かなり必死なのではないでしょうか。
日本の場合、「FIRE」がはやっていますよね。いかに会社から抜け出すのか。やりたいことがあるから抜け出すのではなく、会社勤めを辞めたいからFIERしたい、と。じつに、後ろ向きです。
夢の実現ではなく、投資でうまく稼いで働かなくてすむという考えが多いように思います。
一方、韓国人は安定志向であることは変わらない。ただ、安定した暮らしが狭き門になってしまっている。それで国家公務員試験が人気。そうでなければ、海外へ行く人が多い。
――『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』は、タイトル通り、硬派な内容ですが、何が受けたのでしょうか?
韓国の国家公務員試験はとても難関。だけど、目指す人は多い。その背景には、大企業に入っても、40代、50代での脱落が多いから。継続して働くためには、公務員がいいので、人気が集中している。韓国の国家公務員試験は、ハーバード大学に入るくらい大変なんです。いったいどういうふうにすれば合格するのか? 第一は、そこに関心が寄せられたと思います。
第二に、ゲーム依存症から抜け出して、まっとうな道に進むことができたというのも、受けたポイントでしょう。ゲーム依存症は社会問題の一つですが、2002年頃、86時間以上ゲームにハマって、いのちを失った青年がいました。ゲームによって亡くなった人が毎年何件か発生します。
ゲーム依存から抜け出せないで悩んでいる人たちに対して、「自分でもやれるんだ!」というモチベーションの本として評価されたのもあるでしょう。日本でもSNSなどへの依存を克服したいという人に参考になるのでは。
――「受験合格」「モチベーション」、『勉強が面白くなる瞬間』にも匹敵する、日本人にも刺さりそうな内容ですね。
(本記事は、『たった一度でもすべてをかけたことがあるか』から抜粋、一部編集したものです)