激変する時代には、旧来の価値観に縛られる上司は無用となる。「剣術型の上司」は、自身の経験値をモノサシにして部下を指導。「鉄砲時代の上司」は、現状把握や広い視野を部下に伝えることで指導する。幕末明治期の大転換期に書かれた『学問のすすめ』から、変化の時代のリーダーに必要な3つのポイントを読み解く。

あなたは、部下や周囲に
情熱を与えることができていますか?

 情熱を持ちにくい時代だと言われています。

『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)を書いた齋藤孝氏は、巻末の「解説」で現代の若者は「ミッション」(情熱を持って取り組める使命や役割)を持つことが難しい時代にあり、社会において自分のポジションや心の安定をなかなか得ることができないと述べています。

 大きさの大小にかかわらず、社会や世間において何らかの役割を見つけ、自分が情熱を持って取り組める「ミッション」の存在。

 明治大学の教授である齋藤氏の指摘からも、若者が大学卒業前後までに自らのミッションに出会うことが稀な時代であることがわかります。

 福沢諭吉は『学問のすすめ』で、人は物事に接していないと活力を得ることが難しい、と述べています。小さくても大きくても、社会や周囲の人間と接点を持っていることが人に活力を生み出し、生き生きとした毎日を送るための重要な要素だということです。

 スマートフォンなどの通信機器の発達で、人に直接会ってコミュニケーションを取らなくても、希薄な接続感は持つことができ、物事に接する機会は逆に減少していきます。

 学生時代は付き合う相手も含めて自由に日常を選択ができるのですが、社会人になればそうはいきません。「仕事」という共通目標の達成のため、ある意味では強制的に周囲と接触し、コミュニケーションを取る必要に迫られるからです。

 傾向として、会社の新人研修やOJTで新人の基本的なやる気を引き出すこと、周囲との当たり前の意思疎通など、以前に比べ教えるべきことが増えているのは事実でしょう。