「最近の若い部下は草食系で内向き志向。バイタリティがない。仕事で燃えない。どうしようもない……。」 昭和の成長期を体験してきた管理職からこうした嘆きがよく聞かれる。

 しかし、である。そういうことを言っている当の本人が悪い意味で草食系になっていることが多い。われとわが身の安心安全が第一で、とにかく内向き、バイタリティのかけらもない。私生活の些細なことに萌えているばかりで、肝心の仕事には燃えていない。「上司がオマエだったら、出る元気も引っこんじゃうよ……!」といいたくなるような草食系上司に限って、若者の草食系を嘆くのである。

「萌え」よりも「燃え」

 よく言われるように、ヒトはもっとも可変性の大きな経営資源だ。どんなに改良、改善を重ねても、ある製造機械の生産性が3倍になるということはあまりない。しかし、人的資源となると、その人の心に火がつくかどうかで、成果は5倍にも10倍にもなる。逆に、その人がやる気を失ってしまうと、潜在能力の10分の1も発揮されずに終わってしまう。

 成熟した日本経済にとって、製造業からサービス業へのシフトは必然的な成り行きだ。従業員が仕事に燃えているかどうかが商売の成果を大きく左右するということは、業種の如何に関わらず普遍の真理だが、顧客に対する価値提供の前線をヒトが担うサービス業では、スタッフが燃えているかどうかがとりわけ勝負の分かれ目になる。

 「萌え」もイイけれど、仕事でものをいうのはなんといっても「燃え」のほうだ。日本の高度成長期をけん引したのは、ものづくりの現場での熱い「燃え」だった。これからはサービス業の顧客接点を支えるスタッフの「燃え」がカギを握る。

 成熟した国内市場にあって過当競争が当たり前の外食業界。流行り廃りも激しい。その中にあって、好業績を持続している企業に「ワンダイニング」がある。大阪を中心に、食べ放題方式の焼き肉レストラン事業を展開している。若い会社なので、社員も若い草食系世代。しかも従業員の大半がパートタイムだ。

 しかし、ワンダイニングの現場のスタッフは仕事に燃えている。アルバイトの学生が前傾姿勢で現場に突っ込んでいく。日々の経験の中で自ら考え、アイデアをバンバン出してガンガン実行していく。毎月6000件の提案が現場から上がってきて、現場へとフィードバックされる。焼肉だからというわけではないが(それも多少は関係しているかもしれないが)、燃える肉食系なのだ。

 それだけではない。現場経験、現場での達成感を経験した若者がそのままの勢いで正社員として就職してくる。今度は彼らが肉食系の情熱をもって現場をリードしていく。好循環が生まれている。