正気じゃないけれど……奥深い文豪たちの生き様。42人の文豪が教えてくれる“究極の人間論”。芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、川端康成、三島由紀夫、与謝野晶子……誰もが知る文豪だけど、その作品を教科書以外で読んだことがある人は、意外と少ないかもしれない。「あ、夏目漱石ね」なんて、読んだことがあるふりをしながらも、実は読んだことがないし、ざっくりとしたあらすじさえ語れない。そんな人に向けて、文芸評論に人生を捧げてきた「文豪」のスペシャリストが贈る、文学が一気に身近になる書『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)。【性】【病気】【お金】【酒】【戦争】【死】をテーマに、文豪たちの知られざる“驚きの素顔”がわかる。文豪42人のヘンで、エロくて、ダメだから、奥深い“やたら刺激的な生き様”を一挙公開!
「どんな人が書いたか」を知れば
文学は一気に面白くなる!
突然ですが、ここで私自身について、お話しさせてください。「どんな人が書いたか」を知るだけで、文学は一気に面白くなるのと同じように、拙著『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)を読み進めるにあたって、私自身の人柄にも触れていただくことで、少しは興味が深まると思うからです。
私は中学生のときに文豪作品の面白さに目覚め、大学在学中に書いた評論『意識の暗室 埴谷雄高と三島由紀夫』で第22回群像新人文学賞評論部門の優秀作を受賞。
その後、文芸評論家として活動しながらドイツ留学をしつつ、大学教授として文学を教える立場にもあり、67歳をすぎたいまも文学の研究を続けています。
文豪の作品は難しそう?
多くの文豪たちが住んだ街としても知られる神奈川県鎌倉市に住み、鎌倉にゆかりのある文学をテーマに、さまざまな文学者の作品や資料を展示・紹介している「鎌倉文学館」の館長を11年間にわたって務めました。現在も大学で講義を受け持っています。
そんな私が大学の教え子など、若い世代の人と話をするたびに1つ感じることがあります。
どうも「文豪」「文学」といったものに対して、ものすごく難しい先入観を抱いている人が多いということです。
勝手に壁を設けている?
難解で古めかしい漢字の意味を知っていなくては読み込めないとか、内容自体も難しそうだから読めないとか、文豪作品に対してそんなふうな先入観を抱いているわけです。
知識が足りない自分には、文豪たちの作品に触れる資格はないと、勝手に壁を設けてしまっているようなのです。
はっきり申し上げますが、そんなことはまったくありません。読めない漢字、意味がわからない難解な言葉が出てきたのなら、読み飛ばしてかまいません。
「難解な語彙」を覚えるより
ずっと大切なこと
どうしても知りたい言葉なら、ササッとスマホで調べられるでしょう。私が拙著を通してみなさんにお伝えしたいのは、難解な言葉の知識をたくさん持っていることよりも、「自分の言葉を持ち育てる」ことのほうが、よほど人生で強力な武器になるということです。
いずれにせよ、まずは肩の力を抜いて、気軽な気持ちで読んでみてください。読み進める順番に決まりはありませんので、気になった文豪のページからめくっていただいても構いません。
文壇バーや鎌倉市とのお付き合いなどで、作家のみなさんに実際にお会いしたときの、ちょっとした体験談もあります。どうか楽しんで、文豪の生き様に触れていただけたら幸いです。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。