突然“妹”の写真を見せられても、どう反応してよいか分からないのは当然だろう。それでも質問したことには必要最小限のことを語ってくれた。ここで私たちは、引き揚げ後の三好氏の歩みをある程度知ることになる。
思いきって、斎藤さんが三好さんの写真を見せてもらえないかと頼むと、遺影ならばと仏間に通された。立派な仏壇。これは非常にありがたいことだった。
初めて見る日本帰還後の三好氏の姿は、喪服の合成写真である。ソ連時代と変わらない端整な顔立ちを早くタチアナさんに見せたいと思う。隣には、妻の邦子さんの笑顔の遺影があった。
石村博子 著
後に、誠太郎氏はずっと独身で、両親が亡くなった後は1人暮らしを続けていることを知る。父親の体験が信じられなかったことに加え、親戚と名乗る見も知らぬ人と会うことは苦痛だったのだろう。
何も言わずに人生を終えた父親と、父親を信じ続けた母親の絆を傷つけたくなかったこともあると思う。母親を守ろうとの気持ちが前に出ているようだった。
お墓と三好氏の遺影の写真を見たタチアナさんからは、高揚した返事がすぐに届いた。
「昨日私は感動して、言葉も出ませんでした。この写真は私たち家族にとってとても重要です。この写真を見て、ミヨシさんの一生を感じます」