アポイントなしで長男宅を訪問
仏間に2つ並んだ笑顔の遺影

 築50年ほどの2階建ての家の出入り口は、引き戸であった。奥のガレージ前には古いトラックが止まっていて、渦巻き状になっている銅線らしきものが置かれていた。応答機能のないブザーを押すと、ガタガタと戸を開けて、足音が近づいてくる。

「突然で申し訳ありません。何度か手紙を出したものですが、どうしてもお話ししたいことがあり、見せたいものがあるので伺いました」

 一気呵成に話すと、引き戸が開き、三好氏に似た感じの小柄な老人が現れた。「ああ、あの手紙の……」と、拒絶的ではなく、驚いた風もない。こちらが突然の来訪の意図を話し続けると、神妙な感じで聞いてくれて「じゃあ、入ってみますか」と言ってくれるではないか。まさか家に入れてもらえるとは。

 誠太郎氏はソファに座り、表情はほとんど変わらず、相槌を打つこともなく、かといって敵対的でもなく、ただじっとこちらの言うことを聞いていた。リュドミラさんの赤ん坊の頃から今に至るまでの写真を並べたが、感想は何も語らない。