大学だけではありません。あらゆる教育の場で、人と人との交流が断たれました。多感な子どもたちや若い学生たちにとってこのパンデミックが、心の健康や学びに多大な影響を与えたことは間違いありません。

 そして、「三密」(密閉・密集・密接)を避け、顔を合わせての交流が失われる中、10代、20代などの若者の自殺者数が増加傾向にあることが社会的に懸念されました。

 日本は、世界的にも自殺死亡率が高い国であることが知られています。そして、厚生労働省が発表している自殺の統計を見てみると、パンデミック前の2019年(令和元年)の日本での自殺者数は2万169人で、このうち男性が1万4078人と、自殺者のおよそ7割を占めています。2004年からの統計を見る限りでは、女性よりも男性の自殺者が多い傾向は毎年見られます。

 自殺はなぜ男性に多いのでしょうか?

 様々な理由が報告されていますが、主には男性がもつ生物学的な特徴と、男性を取り巻く社会背景が影響していると考えられています。

 例えば古くからいわれているのは、問題に直面した際に男性の方が敵対的、攻撃的、衝動的な行動をとる傾向があるというものです。つまり、自殺しようと考えた際に、男性は、確実に死に至る方法を取る傾向があると一般的にいわれており、完遂した自殺が女性より2倍多いなどの男女差があります。

ストレスとの付き合い方

 同じトラブルを経験しても、精神的な負担や、身体、健康に及ぼす影響の度合いは、人によって異なります。これは、受けたストレスを効果的に低減できるかが、その人のおかれた状況や資質によって異なるからだと考えられています。

 ストレスを感じた際に、うまく対処しようとする行動をストレスコーピングといい、ストレスへの対処方法にも男女差があるといわれています。

 2004年から2014年にかけて、ストレスの対処行動と男女差について、日本で大規模な調査が行われています。この研究では、35歳から69歳の日本人男女7万9580人に対して、ストレスの自覚とその対処方法を調査しています。