私の自宅購入者向けセミナーの参加者の96%は男性だ。女性は探さないといけないほど、極端に少ない。これは以前からずっと変わらない。「なぜなのだろう」と不思議に思っていたが、その謎が解けた。その答えを出したのは「進化心理学」という学問であった。この学問は現代の倫理観からすると、不愉快なものに感じられるかもしれないが、そんな見方もあると見識を広げる気持ちで読んでほしい。(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)
不動産で重視するポイントが男女で違う?
「進化心理学」の考え方とは
進化心理学とは、人間の祖先が何十万年(何万世代)の間生き延びて、子孫を残してきた過程での成功体験が遺伝子に組み込まれているという話である。そこで子孫を残せなかった者は淘汰(とうた)されており、だからこそ「進化」なのである。人間が明日の食事に困らないようになったのはごく最近のことであり、余裕を持って自分の頭で考えて行動するようになったのも最近である。
私たちは、そんな太古からの歴史が遺伝子にプログラムされているとは意識せずに、毎日を暮らしている。しかし、多くの意思決定と行動は、この遺伝子の影響を多大に受けているらしい。そして、私たちの脳は石器時代と何も変わらず、男女で働き方・感じ方に違いがあるという説すらあるそうだ。
例えば、男性は熾烈(しれつ)な競争に勝ち、女を射止めないと子孫を残せない。そのために、リスクを冒して闘い、自分のできることで女に「モテる」ことを一生懸命にやってきた。私の経験上、男性の会話(特に社長同士の会話)では、年収や資産規模や業績など、お金の軸で人の序列を決めていることが多い。このお金の評価軸は分かりやすいが、人間の本来の価値とはあまり関係がない。たまたまお金持ちになった人もいるので、生き方として「カッコいい」か否かのほうが重要だと私は思っている。
こういった主張は私だけの意見ではなく、「進化心理学」という一つの学問で研究されていることのようなので、「男女平等に反する」といったイデオロギーの問題だけで反発しないでほしい。論点はあくまで、男女の傾向の違いである。
私は、お金・権力などへの執着は明らかに男性のほうが強いと思っている。それゆえ、資産形成や節税や投資に興味を持ち、実際に行っているのは男性が多い。マンションの資産性も、それが女性や家族や友達に対する自己顕示欲が原動力になっていることが多いようだ。
それに対して、女性は男性より家庭を大事にし、子どもを育てることを中心に考えているように思える。それゆえ、公立小学校区やそのエリアの「民度」(ママ友と考えを共有できるものが多いか)には興味があっても、自宅の資産性にはさほど興味を抱かないことになる。つまり、キッチンや水周りの動線や、その立地の住みやすさを資産性よりも優先するのだ。