施設に入居している障害者も
性生活を楽しむ権利がある

 入居している施設が個室ではない場合は、マスターベーションも自由にできない。個人の性生活を守るには、プライベートな空間も必要だ。AVを見たり、エッチな漫画を読んだりするのも、人目があると難しい。

「デリヘルなどを呼んで利用できる環境などがあってもよいのではないかと思います。大部屋だとさすがに難しいと思うので、専用の小部屋を用意する感じになるのでしょうが……。障害のある方は恋愛経験がないという人も多くいらっしゃいます。私が伺うお客様の中には、結婚をされている方、恋人のいる方はほとんどいません。割合で言ったら1割にも満たないほどです。

書影『ルポ 高齢者のセックス』(扶桑社)『ルポ 高齢者のセックス』(扶桑社)
中山美里 著

 一方でうちの店を利用して、生まれて初めて女性とちゃんと話したという方も少なくありません。『もし、自分に彼女がいたらこんな感じかな?』という体験を求めに来ているのですよね。

 特に、途中から障害者になった方は、人生に希望がなくなって、生きることに絶望していると言われる方が多いように感じます。そういった方に言われるのが、うちの店を知って生きがいになったということです。『次に利用するまでの生きる目的になったよ』と言われることもあります」(アユさん)

 性欲は食欲や睡眠欲と違い、生きることに直結していないと思われている。そのために後回しにして考えられがちだ。けれども、やはり生きることに直結しているのだ。