定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる! マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されました。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。
どちらも「総コスト」で判断するのが大事
現役時代に手に入れたマイホームであれば、あちこちにガタが来ている可能性も高いと思います。子どもも巣立ったし、退職を機に、間取り変更や水回りを新しくして快適に住もうと考える方も多いと思いますが、その際、リフォームのコストと「この家にあと何年住めるのか」の見合いについて考えてほしいと思います。
仮に30代で購入した家であれば、そろそろ築30年。高いコストをかけてリフォームをすると、1000万円近くのリフォーム費用がかかることも珍しくないでしょう。これだけのコストを払ったとして、果たしてこの家があと何年くらいもつのだろうか、ということを考えてみてほしいのです。
リフォームをしても、家の躯体(くたい)そのものに不具合が出てくれば、それ以降も修繕費がかかってきます。屋根の葺(ふ)き替えや外壁塗装、シロアリ駆除(ちなみにシロアリ駆除は確定申告で雑損控除できます)など色々な費用がかかって、結果的に「リフォームせずに建て直したり、住み替えたほうが安くあがった」なんてことにもなりかねません。高額なリフォームを検討している場合は、今一度冷静に考えてみてください。
住み替えなら、総コストで判断を
住み替えを検討する場合、今の家を売るか貸すか、という選択肢が出てきます。
基本的には、売却すれば一度に大きなお金が手に入ります。自宅は売っても税金はそれほどかかりません(p189参照)。自宅を無税で売却し、売却した金額よりも安い家を購入できれば、その差額を現金として手に入れることができるわけです。
ただし、住み替えにはコストがかかります。またその後のランニングコストについても一緒に考えておきましょう。
仮に、今の家を4000万円で売却して、住み替え用の家を3000万円で購入すると、1000万円のお金が手に入るように見えますが、実際の手残りはもっと少なくなります。
不動産は買う時も売る時も不動産屋さんへの手数料がかかります。手数料は、上限が決められていて「売買価格の3%+6万円(税別)」です。仮に、このケースで言えば4000万円で売った時に約139万円、3000万円で買った時に約106万円かかります(手数料は交渉次第で安くすることは可能です)。
それ以外にも不動産の名義変更に50万円前後、引っ越し代に20万円くらいかかったとして、これだけで、トータル300万円以上かかることになり、手残りは700万円以下です。
また、不動産取得税という税金がかかることもありますし、住宅ローンの残債があれば、その分も手残りが減ります。
ランニングコストの比較も重要です。仮に、住み替えの手残りが少なくても、その後のランニングコストを抑えることができれば、トータルコストを下げることができますし、逆もまたしかりです。ランニングコストとして加味したいのは、
・固定資産税
・管理費
・保険料
・修繕費 など
駅から遠い戸建てから駅近のマンションへ転居した場合など、毎月の管理費がかかるようになったり、固定資産税が高くなることもありますから要注意です。
貸す場合は利回りを計算する
持ち家を今すぐ売りたくないという場合には、「貸す」という選択肢もあります。貸すということは、資産運用をするということですから、利回りは知っておきたいところです。
利回りの計算方法は、
表面利回り=(この家を貸した場合の年間家賃)÷(今この家を売った場合の金額)です。
目安としては、最低で4~5%は欲しいところです。4000万円で売れる自宅であれば、年間160万円の家賃収入はほしいということです。そして、不動産投資は出口戦略も重要です。
3年間だけ貸して特例を使って売るのは、最も賢い方法
売値があまり上下せず、買い手も比較的つきそうな人気物件であれば、貸せるところまで貸してから売るという方法もあります。売却益が出そうな物件であれば、3年間だけ賃貸に出して、その間家賃収入を稼ぎつつ、「住まなくなってから3年以内の自宅の売却は無税」という特例(p189〜参照)を使って売却、というのも賢い方法です。
ちなみに、「3年間だけ貸したい」「家賃保証を受けたい」という時には、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)の「マイホーム借上げ制度」(https://www.jt-i.jp/index.html)もおすすめです。50歳以上の人の自宅を借り上げてくれる制度で、1人目の入居者が入って以降は、空室になっても家賃を保証してくれます。入居者との契約は「定期借家契約」なので、「3年間だけ」というように、期限を区切って貸すことができます。家賃収入は、一般の家賃よりも少なくなりますが、検討の余地はありです。
新しく家を購入する時は、夫婦の共有名義にすることも検討してみてください。婚姻期間20年以上の夫婦であれば、「住んでいる家もしくは、家を購入するための現金2000万円までは贈与をしても贈与税がかからない」という特例があります。
相続税がかかるような人なら、この特例を利用して、自宅を購入する費用を妻に贈与して夫婦の共有名義にすると、夫の相続財産を減らすことができて相続税の節税になります。
共有する時は、夫婦ともに家と土地を持ち分で持つことをおすすめします。万が一売却をすることになった場合に、このあと紹介する「自宅を売った時の特例」を受けるためには、家屋と土地を一緒に持っている必要があるからです。
*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。情報は本書の発売時のものです。