定年前後の決断で、人生の手取りは2000万円以上変わる!マネージャーナリストでもある税理士の板倉京氏が著し、「わかりやすい」「本当に得をした!」と大人気になった書籍が、2024年の制度改正に合わせ改訂&パワーアップ!「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」として発売されます。本連載では、本書から抜粋して、定年前後に陥りがちな「落とし穴」や知っているだけでトクするポイントを紹介していきます。
「健康保険」をどうするか、は退職後すぐに決めねばならない
退職後、すぐに決めないといけないことのひとつが、「健康保険」をどうするか、です。再就職する場合は、再就職先の健康保険に自動的に加入しますが、そうでない場合は自分でどの健康保険に加入するかを決めて、手続きをしなければいけません。
退職後、再就職しない場合の健康保険の選択肢は3つあります。
①勤めていた会社の健康保険を任意継続する(2年間)
②国民健康保険に入る
③働いている家族の健康保険組合に扶養家族として入る(家族の扶養に入る)
一番おトクなのは、③の「家族の扶養に入る」方法です。保険料の追加負担はゼロですし、加入する健康保険組合のサービス(介護給付や人間ドックなどの補助、福利厚生サービスなど)を受けることもできます。扶養に入る条件は、年金や失業手当の給付なども含めて年収180万円未満(60歳未満の場合は130万円未満)であることなど。勤め人の場合は、ある一定条件で働いている人は扶養に入れなくなる「106万円の壁」もあります。
ただし、この年収は、前年度の収入ではなくて、「見込み」収入額で計算するので前年度の収入が高くても大丈夫です。
「見込み」収入が低ければ、前年の年収が高くても扶養に入れる
退職後、個人事業をはじめる予定のAさん(60歳)は、退職前の年収が1000万円と高額だったので、退職1年目に負担する健康保険料も高くなってしまいます。
国保だと年間約73万円。任意継続だと年間約42万円。
どちらもこれから事業を始めるAさんには痛い出費です。
実は、Aさんのように前年の収入が高くても、今後の収入が一定額以下であれば、家族の扶養に入れるんです。社保の扶養に入れるのは、60歳以上なら年間収入180万円未満。
今はまだスタートしたばかりで、収入の見込みも立っていませんから、Aさんは妻の扶養に入ることにして、社会保険料の新たな負担はゼロ! とすることができました。慌てて、任意継続しなくてよかったですね。
妻や子の扶養に入ることに抵抗がある人もいるかもしれませんが、そんなことは気にせず入れる期間だけでも入っておくとおトクです。扶養の条件は、健康保険組合ごとに異なりますので、実際の条件は家族の加入している組合に確認してください。扶養に入る場合の手続きは、退職日の翌日から5日以内です。
*本記事は「知らないと大損する!定年前後のお金の正解 改訂版」から、抜粋・編集したものです。