夏休みが終わればいよいよ入試に向けての仕上げの時期にはいってきます。どのようにして最終的な志望校を確定するのか、過去問はどのように進めればよいのか? 塾がお膳立てしてくれる最難関校はともかく、それ以外の学校を志望している子の親御さんは意外に情報がないといいます。子どもを本当に伸ばしてくれる志望校の見極め方や選び方、その志望校に合格するための効果的な「過去問対策」をやり方を、大人気プロ家庭教師の安浪京子先生が詳細に説明した『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』から抜粋して、そのノウハウの一部をご紹介します。
志望校のレベルにより受けるべき模試は異なる
中学受験生が塾などで受けるテストで、全学年に共通するのは、主に次の2種類です。
〇 復習テスト――塾で毎週、あるいは隔週などで実施され、直近で学んだことの定着度を測る“範囲がある”テスト(復習テスト、デイリーチェック、週テスト、学習力育成テスト等)。
〇 実力テスト――月1回、あるいは数ヵ月に1回実施される“範囲のない”テスト。クラス編成などの資料にもなる(公開テスト、組み分けテスト等)。
そして、6年生になると本格的に始まるのが、「模試」と言われる実戦力を測るテストです(P.203参照)。
こちらも範囲はなく、志望校を登録すると合格可能性も算出されるので、受験が近づいてくると結果に一喜一憂されるご家庭が多くなります。
実は、お子さんの状況や志望校のレベルによって、受けるべき模試は異なります。つまり、模試を考える時には、「問題難度」と「母集団」を考える必要があるのです。おおまかな目安ですが、レベルの高い順に並べると次のようになります。
【関東】
〇問題レベル サピックス≫四谷大塚≫日能研≫首都圏模試
〇母集団レベル サピックス≫四谷大塚≫日能研≫首都圏模試
【関西】
〇問題レベル 希学園≫浜学園≫日能研≫馬渕教室≫能開センター≫五ツ木・駸々堂
〇母集団レベル 希学園≫浜学園≫馬渕教室・能開センター≫日能研≫五ツ木・駸々堂
(首都圏模試と五ツ木・駸々堂は模試のみを実施しており、塾ではありません)
これらの模試は、6年生になると本格的に始まり、夏前は約2回、9月以降は毎月あるいは隔月のペースで実施されます。
さっぱり点数が取れない場合は間違った模試を受けている可能性も
例えば、標準校志望のお子さんがサピックスや希学園の模試を受けてもさっぱり点数が取れません。なぜなら、これらの模試は最難関・難関志望の子をターゲットに作られているため問題レベルが非常に高く、標準校や中堅校で出題されるような問題がほぼ出ないからです。志望校に合格できる力があっても、偏差値も志望校判定も惨憺たる結果になります。
RちゃんはサピックスのAクラス(一番下のクラス)に在籍しており、志望校は中堅校でした。6年の夏休みを経て、確実に実力がついているのがわかりましたが、サピックスオープンではどれほど頑張っても偏差値が30を上回ることはありませんでした。しかし志望校の過去問では着実に得点できるようになり、第一志望に合格しました。
一方、最難関校志望のお子さんが、小規模塾のオリジナル模試や、首都圏模試や五ツ木・駸々堂模試で合格可能性80%以上であっても信憑性はありません。小規模塾のオリジナル模試は母集団が小さいためデータとして不十分です。また、首都圏模試や五ツ木・駸々堂模試は中堅校・標準校志望の子がボリューム層のため問題難度がそれほど高くありません。最難関志望者が受ければ偏差値は高く出ますが、実際の入試問題とかけ離れたレベルの問題で得点しても意味がありません。
基本的にはお子さんが通っている塾の模試をすすめていますが、お子さんの学力と模試のレベル、あるいは志望校との乖離がある場合、別の模試も検討する必要が出てきます。
ただ、ここで注意が必要なのは、
・自塾の模試と、他の模試を組み合わせる事によって貴重な週末が潰れてしまう
・模試によって個性が異なるため、アウェイの模試で点数が取れるようになるには少し時間がかかる
という点です。判断が付きかねる場合は、塾の先生に相談しましょう。
*本記事は、『中学受験 大逆転の志望校選びと過去問対策 令和最新版』(安浪京子著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成したものです。