「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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老いた親のわがままに困り果てる

「孫にも会いたいから、もっと頻繁に会いに来てよ」。親からの一言です。

 老いた親が孫と会いたいのは世界共通ですが、その思いとは裏腹になかなか子どもや孫に会えないのも世界共通のようです。ただ、現役世代の皆さんも、意地悪で会いに行かないわけではなく、本当に忙しくて会いに行けないのが本音でしょう。

 このケースのように、親の提案を断りづらいときには「YES/NOで返答しない」という方法を使ってみてください。たとえば、「少し仕事が忙しくて。5月は時間ができるから、そのときに会えたらうれしいな」などと返してみましょう。

 ここでは「会えない」とは言っていません。あくまで「遊びに行きたいが、事情があって行けない」のだと説明しています。「遊びに行けない事情」があれば、親としては「それなら仕方がないな」と納得しやすくなります。

 親との会話で大切にしたいのは、「親の言葉にある心理的な背景を理解すること」です。今回のような場合、親には「心細い気持ち」があるのだと推測できます。

 子どもと離れて暮らす親は「さみしさ」と「喪失感」を噛みしめています。その気持ちを拭い去るために「孫に会いたい」という要望が表出するのです。言葉の裏側にある感情に思いを馳せると、たとえ「断る」としても、相手を思いやる言葉を伝えられるようになります。

 使う言葉は人それぞれだと思いますので、皆さんに合った言葉を使っていただけますと幸いです。