こうした現状を客観的に示すのが、日本の「デジタル貿易赤字」の増加です。デジタル赤字とは、通信、コンピューター、情報サービスにおける貿易収支の赤字を指します。つまり、日本はITやデジタル関連のサービスや技術を他国から輸入する一方で、これらの分野での輸出はほとんど行われていない状態が続いているのです。
世界中でITが社会を変革している中、日本も当然その渦に巻き込まれています。しかし、日本は消費者としてこの流れに参加しているにすぎず、企業がITを活用して新しい価値を創造したり、競争力を高めたりすることに関しては、十分な進展が見られません。企業の事業収益の源泉として、ITを活用する視点が欠けているのです。私は、この現状が5年前と変わっていないことに大きな危機感を抱き、今回の改訂に踏み切りました。
一方で、5年の間に大きく変わった点もいくつかあります。それを理解し、最新の状況に対応するために、ITを武器として活用する方法を改めて提唱する必要があると考えました。中でも、最も顕著な変化は、生成AIの登場です。
生成AIは大量のデータを基に新しいコンテンツやアイデアを自動生成することを可能にしました。生成AIは、主にルールベースの処理やパターン認識が中心であった従来のAIとは異なり、文章や画像、音声など、人間がクリエイティブに生み出していたものを自動的に生成する能力を持っています。この生成AIをどのように事業に生かすかも、日本企業の今後の競争力に大きく影響を与えます。
「ソフトウェアファースト」は
競争力と成長戦略の核心
ここで改めて、「ソフトウェアファースト」とは何かを説明しましょう。ソフトウェアファーストとは、DXの本質を捉えた考え方です。その本質はITを活用して組織やビジネスを変革することにあり、そのためにはソフトウェアを自社の武器として活用することが重要です。
ソフトウェアに注目する理由は主に2つあります。まず、その進化の速さです。他の技術と比べて、ソフトウェアは非常に速いペースで発展しています。5年前と現在では技術選定の基準が大きく変わったものもあり、プログラミング言語やAIなども急速に変化しています。