ソフトウェアは「生き物」
継続的な改良が必要

 次に、ソフトウェアの柔軟性が挙げられます。ハードウェアと違い、ソフトウェアはネットワークを通じて常に更新が可能で、新機能の追加やバグ修正が容易です。この柔軟性は、家電や自動車といった物理的な製品にも適用されると考えられます。

 ソフトウェアの柔軟性は、ビジネスモデルにも大きな変革をもたらしています。その代表例が、サブスクリプションに代表される「リカーリングビジネス」です。このモデルは、定期的な料金支払いで継続的にサービスや商品を利用できるもので、従来のオンラインサービスだけでなく、家電、家具、衣類などの分野にも徐々に広がっています。このモデルも今後、自動車や家電などの製品に適用される可能性が高まっています。

 こうしたビジネスモデルの変化に対応するためには、ソフトウェアを自ら企画・開発し、管理できる能力が必要です。現代のソフトウェアは「生き物」のようなもので、一度完成したら終わりではなく、継続的な改良が必要です。そのため、短いサイクルでソフトウェアを更新していく仕組みが重要となります。

 日本以外の多くの国では、この柔軟な開発プロセスに対応するため、ユーザー企業自身がソフトウェア開発を行っています。私が提唱するソフトウェアファーストでも、ソフトウェアの内製開発を推奨しています。ただ、全ての開発を急に内製化するのは難しいのも現実です。

 そこで重要になるのが「手の内化」という概念です。これは、もともとトヨタ自動車で使われていた用語で、重要な技術要素を外部に委ねてブラックボックス化するのではなく、自社の制御下に置くという考え方です。ソフトウェアファーストとは、まさにソフトウェアを手の内化して、それを活用して新たなビジネス価値を創出し、企業の競争力を高めることを目指すものです。ソフトウェアファーストは、単なる技術戦略ではなく、企業の競争力と成長戦略の核心をなす重要な概念といえるでしょう。