現在、ひとり親世帯の半数が相対的な貧困の生活水準にある。ひとり親の多くは日々の生活をこなすためにお金も時間も精一杯で、切り詰めた生活をしても自転車すらも買ってあげられないのが現状だ。子どもたちはしばしば親の苦労を察し、「やりたい」と思う気持ちに蓋をすることがあるという。シングルマザーとして子ども2人を育てながら働く女性の声を聞いた。※本稿は、今井悠介『体験格差』(講談社現代新書)の一部を抜粋・編集したものです。
赤ん坊を落とす暴力夫と別れて
女手ひとつで2人を育てる
池崎愛子さんはデイケアで看護師として働いている。2人の子どもがまだ4歳と2歳だった頃、夫の暴力や夜遊びなどが原因で離婚を経験した。
――離婚をされたことで、経済的な面での変化はありましたか。
夫がいた頃も給料は入れてくれていませんでした。光熱費だけは口座振替で落ちていたんですが、貯蓄をするのは難しかったです。
――離婚以前から収入としては母子家庭に近い状態で。
そうですね。夫とは次男を妊娠している頃から仲が悪くなり、出産後しばらくしてからは家庭内別居のような感じになりました。
彼は食事だけして別の部屋にこもっていました。それで、夜は週4ぐらい遊びに行って、夜中の2時とか3時に帰ってくるという。その回数があまりに多いので改めてほしいという話をしたら喧嘩になって。子どもと家を出て、数日後に戻ったら別の女性がいました。
子どもの目の前で自分を蹴るとかもありました。次男はそのことを覚えていて、今でも時々その話をするんです。まだ次男が赤ちゃんだった頃に、泣いている次男を夫がソファーの上にボンと落とす、みたいなこともありました。