「ペッパーが振り向いて、トニーは自分の恋心に気づくんです。ようやく。観ている皆はとっくに気づいてますけどね。まあ、それが男ということで」
この場面の撮影は、全日程のちょうど真ん中だった。カオスな状態を何とか操りながらファヴローは撮影を続けたが、この場面がその真骨頂だった。
「ジョンはやる気満々でした」とギャフィンが思い出して言う。彼女も他のスタッフも、脚本もなく場面がどっちに向かって進んでいくかも見えていなかった。
ダウニーとパルトローがキスするテイクもあった。「急にディズニー・ホールの屋上に行ってキスしたり。何だ?どうなってるんだ?と皆わけが分かりませんでした」
「朝の4時に10もテイクを重ねながら、俳優の前に走っていって、前のテイクと全然違うことをしてと指示を出したり大騒ぎです。そういうことは他にもありましたが、いつもスタジオの連中には、狂人を見る目で見られましたね」とファヴローが回想する。
編集段階でファヴローは、いくつかのテイクを組み合わせて、ペッパーとトニーがすれすれキスしそうでしない場面を作りあげた。2人のロマンスが花開く待望の瞬間は、マンダリンの登場と同様、お預けになった。