ペッパーがトニーの絵画コレクションについて助言する場面の通し稽古中に、パルトローがファヴローに対していくつか極めて細かい指摘をした。

 そこでファヴローは、ペッパーがトニーに対して同じことを言うように、脚本を書き直した(トニー・スタークが絵画コレクションを持っているという設定自体が、ダウニーの実生活に基づいていた。セット装飾担当のローリー・ギャフィンのオフィスに、ある日ダウニーが「ふらりと現れて椅子に座った」とき、彼のアートについての話が小一時間止まらなかったことを受けて、ギャフィンはセット用の絵画を集めたのだった)。

朝の4時にいくつものパターンで
リテイクを繰り返す修羅場

 パルトローが自分の体験を活かした場面もあった。ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールで撮影された大規模なパーティ会場で、デオドラントをつけ忘れたとトニーに打ち明け、思わぬユーモアで観客を微笑ませた。

 濃い青のドレスに身を包んだペッパーにトニーが魅了される場面は、それ以降のシリーズを通じて鳴り続ける反響のような力を持っていた。「あの場面の絵コンテを描く段階から、皆楽しんでいました」と衣装デザイナーのローラ・ジーン・シャノンが言う。