4月の発売から約1カ月で3万部を突破し、話題になっている『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)。本書では映画やドラマを早送りで見る倍速視聴の習慣にある背景を解明している。このような視聴者には、今後どんなコンテンツが受け入れられるのか。著者である稲田豊史氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
倍速視聴が広がる
3つの背景
スマートフォンや映画のサブスクリプションサービスの普及などによって、時間や場所にとらわれず、膨大な数の映画やドラマを見ることができるようになった。そうした中で、じわじわと広がっている視聴習慣が、作品の再生スピードを1.5倍や2倍にしたり、シーンを10秒スキップしたりする倍速視聴だ。
「倍速視聴が広がったのは大きく3つの背景があります。作品数が多すぎてチェックする時間に追われていること、かけた時間に対する満足度を意味するタイパ(タイムパフォーマンス)を求める人が増えたこと、セリフですべて説明する作品が増えたこと。倍速視聴は若者に比較的多い習慣ではありますが、中年層で行う人も少なくありません」(稲田氏)
NetflixやAmazon プライム・ビデオなどのサブスクリプションサービスでは数千、数万本以上の作品を見ることができ、無料のYouTube、地上波放送なども加えれば、視聴可能な作品は膨大な数に増加している。SNSや友人間で話題になる作品も、それに比例して増加し、多様化しているのだ。