米大統領選で経済・株・為替はこう動く! 「もしトラ」「もしハリ」損得勘定#6Photo:Contributor, picture alliance/gettyimages

ウクライナとパレスチナでの「二つの戦争」は、ロシアやイスラエルは「トランプ再選」に期待して強硬路線を変えず和平は遠のきそうだ。ウクライナ支援で米欧の連帯が弱まり欧州情勢は流動化、アジアではロシアと連携する中国の軍事力行使のハードルが下がる懸念がある。特集『「もしトラ」「もしハリ」損得勘定』(全11回)の#6では、米大統領選挙が二つの戦争に与える影響をひもとく。(笹川平和財団上席フェロー 渡部恒雄)

ウクライナ戦争とパレスチナ紛争
当事者はすでに大統領選意識して行動

 今年11月の米大統領選挙の結果次第で、最も米国の政策と立場が変わると考えられるのが、ウクライナ戦争とイスラエル・パレスチナ紛争だ。

 戦闘を行っている当事者たちはすでに、次の米国大統領が誰になれば自分に有利かを意識しながら動いている。単純化すれば、ロシアのプーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ前大統領が政権に復帰することを期待して、バイデン政権を無視して動いている。

 一方でウクライナのゼレンスキー大統領や、ハマスを含むパレスチナ自治政府の指導者たちは、どちらかといえば、ハリス副大統領の勝利を期待している。

「トランプ再選」となれば、ロシア、イスラエルの強硬路線は変わらないだろう。中東では戦火がさらに拡大しかねず、ウクライナでは米国の軍事支援の後退で米欧の同盟が弱体化、欧州情勢は不安定になる可能性がある。

 米大統領選の結果は「二つの戦争」の行方を不透明にするだけでなく、国際秩序を流動化させ、アジアではロシアと連携する中国の台湾問題などでの軍事力行使のハードルが下がる懸念がある。日本にとっては対中国安全保障問題が切迫した課題になる。