歓迎した開封市は
観光地を大学生に無料開放、24時間開園

 開封市は、約500万人の人口を擁する中国でも有数の古い歴史を持つ都市である。「清明上河図」を再現したテーマパーク「清明上河園」をはじめ、数多くの歴史的遺跡が残る観光都市として知られている。

 近年の中国経済と消費市場の低迷が続く中、観光都市である開封市は大勢やってきた若者たちを歓迎した。市の観光誘致部門は、話題の発端となった4人の女子大生に観光名所の終身無料入場カードを贈呈。さらに大学生を対象に、年末までの全観光施設の無料開放を決定した。

 通常120元(約2400円)の入場料が必要な「清明上河園」も無料となり、24時間開園という特別措置も実施された。鄭州以外の地域からも、わざわざ高鉄(中国新幹線)に乗って集まる大学生が現れた。自転車の大群が走行する中、沿道や交差点では交通整理にあたる警察官の姿が多く見られ、一般市民もボランティアとして水や食べ物を提供し、若者たちを応援した。

 しかし開封市の思惑に反して、あまり大学生たちは観光に興味を示さなかった。彼らにとって楽しかったのは、古都の観光ではなく、集団でレンタバイクに乗って夜間にサイクリングをすることそのものだったのだ。

 こうした学生たちのお祭りムードの熱狂ぶりに対し、ネット上では賛否両論が巻き起こった。「学生の本分は勉強することだ。大勢で街に繰り出して渋滞を引き起こす行為は迷惑以外の何物でもない」という非難の声がある一方で、「今どきの大学生は一番可哀想だ。コロナ禍で厳しい移動制限を課され、寮に閉じ込められていたのだから」(注:中国の大学生の大多数は大学寮に居住している)、「今の大学生は一生懸命勉強しても卒業即失業という現実に直面している。ストレスが溜まっていて、発散したい気持ちは理解できる」と、同情や理解を示す声も多く見られた。

 専門家たちは、今回の若者たちの行動の背景について、「景気の低迷が、若者の就職難、所得減、生活苦といった問題をもたらした。そのため若者の間で不安と無力感が高まっている。今回の「夜間サイクリング」という偶然のきっかけが、日ごろ多くの制限でたまりにたまったストレスを発散する行動につながったといえる」「これは、不満の多い現実から逃避したい、安らぎを求めるといった心境が行動に移ったと考えられる」と分析した。

深刻化する若者の就職難と
将来への不安

 2024年9月時点での若年層(16~24歳、学生を除く)の失業率は17.6%と、依然として高水準を維持している。今年の夏には1179万人もの大学新卒者が就職市場に参入し、「卒業=失業」が常態化している状況だ。近年では、デリバリー配達員やライドシェア運転手として生計を立てたり、実家で「専業児女」として親に依存して生活したりする若者が増加している。