若者が豪語しなくなった、おとなしくなった――こう聞いたら、あなたは「いいことだ」と思うだろうか、それとも「大丈夫か?」と不安になるだろうか?日本の若者は昔に比べて謙虚でおとなしい人が増えている印象があるが、中国では今、約2.6億人いるといわれるZ世代の行動や思考、特に就職やお金に対する考え方が大きく変わりつつあることが注目を集めている。どう変わったのかというと……。(日中福祉プランニング代表 王 青)
人口2.6億人、中国のZ世代が大きく変わりつつある
中国のZ世代(1995年から2005年生まれ)は、中国の高度経済成長期に育ち、幼い頃からデジタル環境に親しんだ世代である。彼らの人数は約2.6億人といわれている。人口の多いこの世代が就職し、社会にどのように参加するかが、今後の中国社会や経済に大きな影響を及ぼすのは言うまでもない。
急速に経済が成長し、豊かになり、世界で中国の存在感が高まった「黄金時代」を経験してきた彼らは、これまで常に自信にあふれ、希望に満ちていた。しかし今の彼らは将来に対する希望を持てず、「生不逢時(生まれた時代を間違った)」と嘆く声も多い。
2021年9月、「中国青年報」(中国共産党の青年組織「共青団」の機関紙)は、翌年に卒業予定の大学生2700人に対し、就職先や年収に関するアンケートを実施した。その結果、「初任給で月収が1万元(約20万円)を超える」と考えている学生が20%に達し、約60%の学生は「働き始めて10年以内に年収が100万元(約2000万円)になる」と期待していることが分かった。
この調査の対象となっている学生たちは、2000年代生まれで「00後(リンリンホウ)」とも呼ばれる。当時、若者たちの楽観的な発言がSNSで広まり、「豪語している」と多くの注目を集めた。「ずいぶん楽観的だね。どこからその自信が?」「世間を知らなすぎる。現実はそんなに甘くない」といった冷ややかなコメントが目立った。
しかし、その後わずか2年で「10年以内に年収100万元をめざす」という彼らの夢ははかなく消えた。高収入はおろか、職に就くことさえできない。現在、中国の若者は「超超超就職氷河期」に直面しているのだ。