運動したい、でもできない……。そこで本連載は論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指してみてください。
Photo: Adobe Stock
記憶力に自信がない!?
「最近、記憶力に自信がなくなった」という声をよく聞きます。
そんな方におすすめの論文をご紹介しましょう。
中国・北京大学の研究チームは、2019年までに出された73の論文をメタ解析、5600名のMCI(軽度認知障害)または認知症の人の、運動療法について調べました(※1)。
それをまとめたものが次の図です。
「筋トレ」が記憶機能に効く
5000名以上ですから、みなさんさまざまな運動をしていたようですが、この論文で私が注目したのは「筋トレが記憶機能に効いた」というところです。
※実行機能:認知症で一番多いアルツハイマー型によく見られる症状で、段取りよく料理をする、予算内で買い物をする、洗濯のときに黒いものと白いものを分けて洗う、マニュアル通りに機械を操作するなどのこと。
論文によれば軽度認知障害レベルの人では、特に筋トレは効果があったというのです。
ただしやり過ぎはダメ
ただ筋トレは、死亡率、心血管疾患、がん、糖尿病のリスクを下げるものの、週に130分以上などやり過ぎると逆効果になるという東北大学の調査もあります(ただし糖尿病だけは実施時間が長ければ長いほどそのリスクは低くなる)(※2)。
筋トレとウォーキングの組み合わせで
記憶力を向上させる
こうした結果から私は認知機能に衰えを感じる方には、ウォーキングの前後に適度な筋トレを組み合わせることを提案したいと思います。
そうすることでさらなる効果が期待できると思うからです。
※歩き方には「コツ」があります。お時間のある方は、本も参照してみてください。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的で効果的な歩き方が紹介されています。
【参考文献】
※1 Huang X, et al. Comparative efficacy of various exercise interventions on cognitive function in patients with mild cognitive impairment or dementia: A systematic review and network meta-analysis. J Sport Health Sci. 2022 Mar;11(2):212-223.doi: 10.1016/j.jshs.2021.05.003. Epub 2021 May 16.
※2 Momma H, et al. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022 Jul;56(13):755-763. doi: 10.1136/bjsports-2021-105061. Epub 2022 Feb 28.