ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指したいものです。そこで本連載では論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。(初出:2023年11月17日)
コロナ禍で体重が増えた
かつて私の健康とストレスの解消法は「水泳」で、長年、診察が終わるとジムに行ってプールで泳ぐ習慣がありました。
研究や執筆、テレビ局に依頼された健康番組の企画案など、泳ぎながらアイデアを練ることもしばしば。
ところが新型コロナウイルス感染症発生からの3年間は患者さんが激増し、私が診察室で座る時間は1日12時間超。
帰宅したらクタクタ。悲しいことに多忙でボロボロ。体重もすっかり増えていました。
50代でランニングをはじめるも……
そこで水泳ではなくランニングを始めたところ、50代という年齢もあってか体力的にはなかなかつらい。
困り果てた私は、いわば消去法でウォーキングを始めたのですがこれが驚くべき効果をもたらしました。
毎朝、昼、夜にとスキマ時間でウォーキングをするうちに、体重は減り、体調がよくなっていったのです。
科学が認めるウォーキングの効果
ただ私は医師であり論文マニアでもあります。
自分の経験だけで「ウォーキングが最高の健康法だ」と断言することはできません。
そこでエビデンスを求めて科学論文を調べたところ、ウォーキングの効果については『ランセット』など、査読の厳しさで知られる権威ある学術誌に掲載されているものも多く、改めてその効果に感嘆しました。
デメリットがないのも大きなメリット
「歩くだけで健康になれるというのは朗報だ」。
これは私自身の実感でもありますが、有酸素運動の代表とも言えるウォーキングにはたくさんのメリットがあるとともに、特筆すべきデメリットがないのも見逃せない「メリット」。
この点を軽んじてはなりません。
なぜなら健康法というのは、継続・習慣化してこそ意味があり、デメリットがないことは大きなメリットであるからです。
たとえば「ウォーキングとひざ痛の因果関係は認められない」という調査結果も、世界的に有名な医学雑誌に発表されていることです(※1)。
ウォーキングはエビデンスの面からも、メリットの面からも、また私自身の実感からもほんとうにおすすめできる運動です。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書にはウォーキングの効果にまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。
※1 Gates LS, et al. Recreational Physical Activity and Risk of Incident Knee Osteoarthritis: An International Meta-Analysis of Individual Participant-Level Data. Arthritis Rheumatol. 2022 Apr;74(4):612-622. doi: 10.1002/art.42001.