具体的にどのように伝えたらいいのか
――具体的にどういったアプローチがいいでしょうか?
まずは「仕事が忙しくなって家計を見る暇がないから、一度やってみてくれないか」といった形で依頼してみるのがいいですね。ただし、これは重要なポイントなのですが、任せっきりにするのではなく、しっかりとサポートする準備が必要です。
――サポートというと?
家計管理の引き継ぎをきちんと行う必要があります。例えば、奥さんの知り合いで、上手に家計をやりくりしている人に相談できるような環境を整えるとか。最初は大変かもしれませんが、そこを乗り越えれば、奥さんなりの家計管理のスタイルが確立されるかもしれません。
――奥さんに任せて、もし上手くいかなかった場合はどうしたらいいでしょう?
それは十分あり得る話です。実は今の時代、家計管理の問題は離婚理由の一つにもなり得ます。金銭感覚が合わないとか、妻が向上心がないといった理由での離婚は、実際にあります。
――えっ、向上心がないから離婚だなんて怖すぎる……それほど重要な問題なんですね。
ええ。ですから、まずは試してみることが大事なんです。それでうまくいかなければ、二つの選択肢があります。一つは、この方が引き続き家計を管理していく。ただしその場合は、自分は家庭の重要な役割を担っているのだという風に考え方を切り替えることが大切です。「我慢」ではなく、「自負」ですね。
「もう一つの選択肢」とは?
――もう一つの選択肢は?
パートナーを変えるという選択です。ただし、その前にもう一度、なぜ奥さんが家計を見ないのか、本当の理由を探ってみる必要があります。「任せてもらえないと思っていた」という可能性もありますからね。
――改めて、この相談者へのアドバイスをまとめていただけますか。
はい。まず、あなたの考え方は決して古くありません。家計の維持を重要視することは、むしろ望ましい考え方です。ただし、20年間の我慢は、新しい誤解を生んでいる可能性があります。
まずは率直に話し合い、一度奥さんに家計管理を任せてみてください。その際は、しっかりとサポートすることが大切です。そして、結果がどうであれ、それを踏まえて次のステップを考える。家計の問題は、夫婦関係の根幹に関わる重要な課題なのです。
最後に付け加えるなら、「我慢」から「自負」への転換を意識してみてください。家庭の中枢を担うことは、決してマイナスではないのですから。
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岡野あつこ
1978年 立命館大学卒(専攻:職業心理学)、2009年 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科卒(MBA取得)。結婚・出産後、専業主婦になるものの、夫の浮気により36歳で慰謝料ゼロで離婚。1991年に結婚・離婚・再婚相談事業を行う事業を開始する。34年間のカウンセリングにおいて、4万件近くの夫婦問題の相談に携わってきた。後進のカウンセラー育成にも力を入れ、岡野あつこのライフアップスクールを開講。2200人を超える卒業生を輩出している。