自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

「親しい友人が誰もいない」寂しさを埋めるたった1つの方法『ぼくにはなにもない 愛蔵版』より

友人は「過去」から探す

私も「親しい友人がいない」と感じることが多々ありました。

友達がまったくいなかったわけではありませんが、社会人になって友人との物理的な距離が広がるにつれ、孤独を感じることも多くなりました。

こうしたとき、私は「過去に友達を探す」ようにしています。

「歴史の審判に耐えて残っている著者の本を深く読み込む」ということです。

私は高校時代まで運動部に所属しており、読書の習慣がありませんでした。

しかし、大学受験に二度失敗し、「自分の存在価値とは何か」「この苦しい状況にはどんな意味があるのか」といった問いが自然と湧き上がったとき、答えを求めて本を読み始めました。

最初に手に取ったのは、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』でした。

当時の私にとってエンデの作品は非常に読みやすく、深く考えさせられる内容でした。

そこから『モモ』や『ジム・ボタン』シリーズといった作品に進み、近所の図書館でエンデの作品を一通り借りて読みました。活字に慣れていない自分でも理解でき、同時に考えさせられるエンデの作品は、孤独を埋めてくれる友人のような存在となりました。

作品と向き合うなかで、著者を友人のように感じたのはそれがはじめてです。

著者との対話が心の隙間を埋めてくれる

本の著者を「友人」と感じるためには、ただ読んで楽しむだけでなく、「その著者がどのような意図でこれを書いたのか」「どんな背景やメッセージが込められているのか」を問いかけながら読むことが重要です。

自分が抱える疑問や苦しみを読書で解決しようとするプロセスの中で、「この著者は自分の心情を理解してくれる」と感じることもあれば、「それは違うだろう」と反発することもあります。

こうした対話の中で著者に親しみを覚え、その人が身近な存在であるような感覚が芽生えます。

自分が気に入った哲学者や作家の著作を掘り下げると、共感できる部分が見つかり、対話が生まれる中で心の隙間を埋めてくれます。

どんな時代でも、著者の中には自分と共通点を持つ人が必ずいて、そうした人々に出会いによって心が楽になることも多いです。

「過去」と「未来」の両方で友人を探す

「読み」が深まっていくと、その著者が影響を受けた作品や人物、時代背景へと関心が広がります。

たとえば、ミヒャエル・エンデの思想の背景を探ると、彼がどのような時代を生き、どんな価値観と向き合っていたのか(「虚無感」や「忙しさ」…)が見えてきます。

その著者に影響を与えた他の作家や思想家にも関心が広がることで、さらに広い過去の友人たちのネットワークに分け入り、孤独を感じにくくなります。

こうした広がりは、単なる趣味としての読書を超えて、現実に影響してきます。

過去に友人を見つけることができると、そこから未来が拓けたりもします。

自分が好きな本や思想を深掘りしていくうちに、同じ著者や作品群を好む人々と、現実世界でも出会って語り合うという可能性が高まります。

その共通点を介して、自然に友人関係が生まれることもあります。

今親しい人がいなくても、過去を探ることで他者との共通点や広がりが生まれ、それが未来へと繋がっていくと考えてみてはいかがでしょうか。

孤独を感じたら、本を手に取ってみる

孤独を感じるときには、過去に目を向け、共感できる著者や作品を見つけることがおすすめです。

その出会いを通じて得た経験や知識は、未来の人間関係を築く大きな可能性を秘めています。

最初は直接的な人間関係がなくとも、読書を通じて過去の著者たちと豊かな対話やつながりを感じることができれば、孤独感は自然と埋まり、今後へと続く道も見つけることができます。

(本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)