「先週末、大統領が米国内のすべての日本の資産を凍結したため、戦争はさらに不可避なものとなりました」(編集部注/日本の南部仏印進駐の動きに対する制裁措置)。
カークもこの可能性について、うなずいた。ラトランドは続けた。
「ご存じの通り、日本軍は宣戦布告の前に、常に先制攻撃を行います。日清戦争はどうだったでしょう?日本は中国海軍の艦船を数隻、撃沈してから戦争を開始しました。日露戦争は?日本はロシア海軍の艦艇数隻に対する奇襲攻撃から開始しました。次の戦争も、アメリカの艦船への攻撃で始まるかもしれない。そう思われませんか?」
相手が相槌を打つ前に、ラトランドはさらに補足して要点を強調した。
「実際、それはあなたにとって、そしてあなたの国にとって、最も重要な問題ではないでしょうか?」。
カークはうなずいた。ラトランドのあけすけな物言いに少しイライラしたが、ラトランドがこの会話をどこに持って行こうとしているのか、カークは興味を持った。
言っている内容は興味深いが
二重スパイとは取引できない
「アメリカ海軍にとって最重要なことは、この攻撃がいつ、どこで行われるかを解明することでしょう」とラトランドは続けた。
カークは再びうなずき、自分の手の内は見せないままだったが、少し前のめりになった。ラトランドは言った。
「私は日本海軍のことを、誰よりもよく知っています。私は日本の提督たちを知っています。他の外国人と違って、私は彼らの家に行ったことすらあります。私は彼らと一緒に、20年間も仕事をしてきました。彼らは私を信頼しています。他の外国人とは違い、私を信頼しているのです。彼らが私を信頼する理由がお分かりになりますか、カーク局長。それは、日本人が動物に似ているからです。彼らは、自分たちが誰かに好かれていると知ると、それに応じて反応するのですよ。日本人は、私が彼らを好きであることを知っています」(編集部注/ラトランドは、1923年以来、イギリスの海軍航空技術を日本海軍に提供していた)
ラトランドは相手の反応を見てから、さらに続けた。
「私は彼らの表情を読むことができるので、いつ攻撃がくるかが分かります。もちろん、すべての詳細情報を知ることはできませんが、概要を知り、それをあなたに伝えることはできるでしょう」。