税務署が「生前贈与」を厳しくチェックする理由とは?
総務省の調査によれば、老後1か月の生活費は、60代の世帯で約30万円、70代以上の世帯で約25万円かかると言われている。仮に90歳まで生きるとすれば、60歳からの30年間で9600万円が必要になる(30万円×12×10+25万円×12×20)。病気や介護といった問題も無視できない。
本連載は、終活や相続に関するノウハウを紹介し、「お金の不安」を解消するものだ。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。この度、5000人の声を集めたエンディングノート、『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を出版する。銀行口座、保険、年金、介護、不動産、NISA、葬儀といった観点から、終活と相続のリアルをあますところなく伝えている。お金の不安を解消するためのポイントを聞いた。
知らないと絶対損する「生前贈与」の話
本日は、本日は「終活と生前贈与」についてお話しします。年末年始、終活や相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
あなたが特定の子供にだけ生前贈与をすると、あなたが亡くなった後に、相続争いに発展する恐れがあります。民法上、生前贈与で渡した財産は、“遺産の前渡し” として扱われ、相続が起きた時に調整する必要があります。これを「特別受益(とくべつじゅえき)の持ち戻し」といいます。
例えば、もともと1億円の財産を持っている方が、長女に2000万円を生前贈与し、財産が8000万円の状態で亡くなったとします。相続人は長女と長男の2人です。この場合、長女は既に2000万円の特別受益を受けていますので、遺産8000万円は、長女が3000万円、長男が5000万円を相続することになります。
このような法律上の取り扱いがあることを知っている人は多くなく、「贈与と相続は別物でしょ?」と思われがちです。
しかし、特別受益という制度がある以上、生前贈与をするなら将来の争いにならないよう、配慮する必要があります。また、相続税申告が必要な場合、税務署も過去に贈与がなかったかを調べます。注意点をお伝えします。