『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)でデビューし、第21回「本屋大賞」をはじめ賞タイトル15冠を獲得して話題の小説家・宮島未奈さんが、待望の新作『婚活マエストロ』(文藝春秋)を出版した。独身40歳男性の在宅ライターと婚活業界で働く女性が、人々との出会いと別れを繰り返しながら心を通わせていく物語が、多くの反響を呼んでいる。宮島さんに、新作の裏話や小説家のリアル、人間関係を良好に保つコツ、また、Xのヘビーユーザーでもある彼女だからこそ見いだしたSNSとのつき合い方について話を聞いた。(聞き手/ライター 正木伸城)
編集者からテーマを渡され
書き始めた『婚活マエストロ』
――新作『婚活マエストロ』では、なぜ婚活をテーマにされたのでしょうか?
担当編集者のオーダーがあったからです。その担当編集者が大学時代に婚活パーティーの司会のアルバイトをしていたということで、「そういう話を書いてほしい」と依頼されました。で、「じゃあ書いてみようかな」という感じで書き始めました。自分から「書きたいです」というよりも、「じゃあ」という感じですね。
私自身は、婚活パーティーに行ったことがなくて。だから、婚活については主にインターネットで徹底的に調べて、パーティーの様子などは婚活業者などをリサーチして情報収集をしました。既婚者ですから、婚活アプリにも登録せず、想像で書きました。
――婚活の描写も細かくてものすごくリアリティがあったので、てっきり綿密に現場取材されたのかと……。
テレビで(お笑いコンビ)ナインティナインのお見合い番組はよく見ていたので、その影響は受けているかもしれません。男女が集まって結婚相手を探すって、面白いですよね。誰と誰が結ばれるんだろうって人間模様が、エンタメとして成立するんだというのはその番組を観て感じていたので、そこからも学んでいた気がします。
書いてみて、あまりに現実の婚活とかけ離れていたら、編集者から指摘が入ると思ったんです。担当編集者は婚活現場にいた人ですから。でも、特段指摘もなく、私の想像する婚活がそのまま作品になりました。