『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)でデビューし、第21回「本屋大賞」をはじめ賞タイトル15冠を獲得して話題の小説家・宮島未奈さんが、待望の新作『婚活マエストロ』(文藝春秋)を出版した。独身40歳男性の在宅ライターと婚活業界で働く女性が、人々との出会いと別れを繰り返しながら心を通わせていく物語が、多くの反響を呼んでいる。宮島さんに、新作の裏話や出会いについて話を聞いた。(聞き手/ライター 正木伸城)
登場人物との“対話”によって
小説の結論は「たまたま」決まっていく
――インタビュー(2)『「出会いが全然ない。どうしたらいい?」→人気作家の答えが火の玉ストレートだった!』では、宮島さんご自身が、「小説を書いたことでたくさんの出会いを得たとお聞きしました。その話で言うと、大ファンであるお笑いコンビ爆笑問題の太田光さんと対談されていますね。
10代の頃から爆笑問題さんが大好きで、友達がいなかった時期に太田さんが書かれたものを読んで励まされましたし、爆笑問題さんの漫才や出演番組はほとんど観てきました。その太田さんが、『成瀬は天下を取りにいく』(以下、『成瀬』と表記)を読んで「面白い」って言ってくださったことから対談が叶いました。
この出会いにはある意味、納得できるところがあるんです。私が爆笑問題を見て育ったからこそ、『成瀬』が書けたから。だから、逆説的に太田さんも『成瀬』を気に入るというのはわりと納得というか。私の、太田さんをめぐる経験が『成瀬』につながっているのは確かです。太田さんも、『成瀬』の中身に感性が合うところって絶対あると思うんですよね。
とはいえ、対談ができたのは運が良かったからだと思っていて。『成瀬』を読んでもらったことも含めて、偶然です。そこに、「私の努力です」なんて意識はありません。私が行動した、小説を書いたということが出会いにつながってはいるんだけど、偶然うまくいって、太田さんに会えた。また、たくさんの人に小説を読んでもらえた。
――出会いは人生を豊かにする、とよく言われますけど、結果的にそうなっていた?
そうですね、たまたまうまくいったから「あの出会いがよかった」と言えるものですよね。例えば、私が夫と大学時代に出会って、別れずに今日まで暮らしていけているのも結果論でしかないし、その夫の影響で滋賀を舞台に小説を書いてヒットしたわけですけど、それも偶然。出会いの時点では、絶対にそれは分からない。そのことを忘れちゃいけないと思います。