自分は何も持っていない」「いつも他人を妬んでしまう」「毎日がつまらない」――誰しも一度は感じたことのある、やり場のない鬱屈した思い。そんな感情に寄り添ってくれるのが、クリープハイプ・尾崎世界観氏も推薦する『ぼくにはなにもない 愛蔵版』。この記事では、著者の齋藤真行氏に教えてもらった「ネガティブな気持ちを解消する方法」を紹介する。(構成/ダイヤモンド社・林拓馬)

「この人、つまらない」という顔をされたとき、すぐ確認すべきこと『ぼくにはなにもない 愛蔵版』より

相手に「つまらない人」と思われたら

相手と一緒にいるとき、「自分がつまらない存在と思われているのではないか」と感じた場合、どうすればいいでしょうか。

確認すべきポイントについて、いくつかの視点に分けて考えてみます。

自分と相手の「問題領域」を区別する

まず重要なのは、相手が「つまらない」と感じている理由について、自分と相手の問題に分けて考えることです。

この区別をつけることができないと、すべてを自分の責任と捉えて苦しくなったり、逆に相手の責任だと決めつけて関係性が悪化したりしてしまいます。

アドラー心理学でも言われる、「課題の分離」の考え方です。

たとえば、相手が「つまらない」と感じている場合、それは相手の受け取り方や状況に起因する部分もあれば、こちら側の言動が関係している部分もあり、その「割合」はいつも同じというわけではありません。

この二つを混同せず、冷静に区別することが大切です。

仮に相手が「つまらない」と感じていたとしても、自分自身がその関係を面白いと思えているならば、関係性を見直す価値はまだあるかもしれません。

相手の「ニーズ」に向き合う

相手がこちら側のことを「面白い」と感じてもらうために、こちらとしてはなにができるでしょうか。

これは相手のニーズにしっかり向き合うことで、解決の糸口が見えてくることが多いです。

会話をするとき、こちらが内容としてどんなに素晴らしい話をしていると思っていても、相手が関心としているところにその内容がかすりもしないのであれば、相手にとっては「つまらない」と感じられます。

一方で、相手が本当に関心を持っている話題や、相手が直面している課題に関係する内容であれば、自然と面白いと感じてもらえます。

相手の話をよく聞き、相手が何を考え、どんなことに悩んでいるのかを知る努力が必要です。

「今、どんなことに取り組んでいますか?」「最近、何か悩んでいることはありますか?」といった質問を通じて、相手の内面に触れることが「面白い」と互いに思える関係を深める第一歩になります。

相手の心を「汲む」ことの大切さ

つまり相手とのコミュニケーションが「ずれている」とき、つまらないと感じられてしまうことが多いということです。

これは、お互いのニーズや関心が一致していない場合に起こります。

「ずれ」を避けるためには、相手の心や向き合っている状況を「汲む」意識が非常に大切です。

単に話を聞くのではなく、相手の心情やその背景にあるものも想像しながら聞くということです。

これができると、相手の考えとのズレを抑え、より互いに「かみ合う」会話ができるようになります。

自己中心的にならないこと

「面白くない」と感じられるもう一つの理由は、自分の話したいことばかりを話してしまうことです。

一方的な会話は、たとえ内容がどれだけ豊かなものでも、相手に「つまらない」と思われやすいです。

相手も会話に参加して楽しみたいのですが、その思いをこちら側が自分の話で妨げてしまっています。

会話が一方通行にならないよう、相手の反応を見ながら会話を「共につくる」姿勢が必要です。

質問を投げかけたり、相手の意見を深掘りしたりする技術も学んでみると、よりよい関係作りに役立ちます。

聞く力を磨く

相手のニーズに応えるためには、「質問する力」が欠かせません。

質問力を磨くために、コーチングの世界でよく言われる「オープン・エスチョン」と「クローズド・エスチョン」を使い分けることが役立ちます。

ここでの「クローズド」は、「はい・いいえ」の応答だけで完結する種類の質問です。

「オープン」はある程度文章として応答しないと完結しない質問のことを言います。

「お元気ですか?」という質問はクローズドで、相手が「元気です」と答えて終わってしまう可能性があります。

一方、「○○についてどう考えていますか?」という場合、答えるのにより多くの言葉が必要です。

より深い会話と関係を築く上で、「オープン」な質問をする力は身に着ける価値があります。

「オープン」な質問をするには単に相手の言葉を理解するというばかりか、その言葉の背景にある感情や価値観を想像することで、より相手の心に添う質問を投げかけることができるようになります。

語られる言葉にはすべて土台や背景となるものがあり、そこに思いをはせながら質問することで相手への理解は飛躍的に深まります。

つまらないと感じる原因となる互いの関心やニーズのズレを埋めるため、互いに言葉や想像力を駆使して歩み寄り、共通の話題や価値観を見つける意識を持つことで「面白い」関係は築かれていきます。

まとめ

「相手がつまらないと思っているのでは」と感じたとき、まず相手の問題と自分の問題を分けて考えてみます。

そのうえで相手のニーズに向き合い、心を汲む姿勢を持つことが関係改善の鍵になります。

また自分の話したいことばかりを優先せず、相手が関心のある領域、「面白い」と思う話題は何かを考え、質問しながら会話を進めることが重要です。

これらの姿勢を心掛けることで、よりよいコミュニケーションと関係を築く道が拓けます。

(本記事は『ぼくにはなにもない 愛蔵版』の著者、齋藤真行氏が特別に書き下ろしたものです)