変形性膝関節症(膝OA)は、加齢や膝関節の半月板損傷などを機に、関節周囲の軟骨や骨が変形する病気だ。
有病率は40歳以上の55%で、その7割以上が関節の腫れや痛みなどの自覚症状に悩まされている。
膝OAの厄介な点は、痛みにたじろぐあまり、生活に支障が出ることだ。運動量も減るので、生活習慣病リスクや、高齢なら認知症リスクも上昇する。
治療については、鎮痛薬の内服やヒアルロン酸の関節内注射などの「保存療法」で痛みを騙しながら、最終手段の「人工膝関節置換術」まで粘るのが一般的だった。しかし、2022年以降、自分の膝関節を温存できる外科的な方法が幾つか保険適用されている。
一つは「膝周囲骨切り術」だ。O脚やX脚の歩き癖で膝関節の軟骨の片側がすり減った状態の患者が対象で、外側、もしくは内側に湾曲した膝上の骨をくさび形に切り、正常な角度に矯正する。22年度に日本人に多いO脚向けの術式が、間を置いて24年度にはX脚向けの術式が保険適用された。
膝軟骨がすっかり摩耗する前に同手術を受けた場合、術後5~15年は自分の膝関節を温存できる。可動域は変わらないので、正座も激しい運動もできるのがうれしい。
二つ目は、同じく24年度に承認された「半月板制動術」だ。膝軟骨の摩耗がほとんどない軽症のうちに、はみ出たクッション材(半月板)を元の位置に戻す手術だ。
変形前が手術時なので、「膝がグキッとした」「一時、強烈に痛かったが治まった」などの兆候を無視せず、医師に相談すること。
保存療法では23年6月に、より長く痛みをコントロールできる「ラジオ波焼灼療法」が保険適用された。膝の周辺に電極針を刺し、ラジオ波の熱で痛みを伝える末梢神経を焼く方法で、術後は痛みスコアが3割減~半減し、改善効果は2年ほど続く。
そのほか、自己血から血小板成分を分離して膝関節に注入するPRP療法も注目されている。痛みスコアの改善は期待できそうだが、こちらは自由診療だ。お財布と相談しつつ、効果と副作用の情報をきちんと集めよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)