膝の痛みに悩むのは、高齢者だけではなく、40~50代のミドル世代にも多い。膝痛になったときの対処法と予防法について、膝関節症のスペシャリストである関町病院の丸山公院長に聞いた。(清談社 沼澤典史)
40~50代でもいる膝痛の患者
股関節など他関節への影響も
加齢による膝痛の主な原因である変形性膝関節症。このような膝痛は高齢者のものと思いがちだが、ミドル世代から症状や予兆が発生することも珍しくないという。「四十肩」「五十肩」ならぬ「四十膝」「五十膝」のようなものがあるのだ。
「四十膝や五十膝は、医学的な疾患名ではありませんが、その年代で外傷がなく膝の痛みが出るとすれば、退行性変性(エイジング=加齢)に基づく、変形性膝関節症であると思います。変形性膝関節症の原因は多様で、加齢の他に遺伝、体重増加、スポーツなどの障害、筋力低下などがあります」(丸山氏、以下同)
変形性膝関節症は、膝関節の間にある軟骨がすり減ることで骨同士が擦れ、痛みが生じるもの。もともと2ミリほどしかない膝軟骨だが、加齢やさまざまな原因により1ミリ以下にすり減ってしまうのだ。このような膝痛は、他の関節にも影響を及ぼす。
「近接関節である股関節や足関節に影響し、股関節周囲炎や足関節炎、腱鞘(けんしょう)炎を起こすことがあります。これらはO脚やX脚などの体のバランスや膝関節拘縮(関節が固まって動かなくなる状態)に起因します。さらに、腰痛や仙腸関節炎を引き起こすこともあり、こちらは機能的な脚長差や筋力のアンバランスさにも起因すると思われます」
膝痛はさまざまな箇所に影響を与え、若くても放っておけばQOLを著しく低下させてしまう。実際、丸山氏の病院には40、50代で膝痛を訴え、通院する患者も少なくないという。
「男性で比較的多いのは、過去の半月板損傷が原因になっているケース。主にはスポーツをやっていた方で、特に目立つのはラグビーなどのコンタクトスポーツの経験者です。一方、女性は変形性膝関節症になる数が男性の約2倍といわれます。これは、更年期を迎えて、女性ホルモンのエストロゲンが急激に低下することにより、関節軟骨の変形が起きやすいためです」