「高齢者虐待はなぜ起こる?」→ワースト1の原因とは?
総務省の調査によれば、老後1か月の生活費は、60代の世帯で約30万円、70代以上の世帯で約25万円かかると言われている。仮に90歳まで生きるとすれば、60歳からの30年間で9600万円が必要になる(30万円×12×10+25万円×12×20)。病気や介護といった問題も無視できない。
本連載は、終活や相続に関するノウハウを紹介し、「お金の不安」を解消するものだ。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。この度、5000人の声を集めたエンディングノート、『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を出版する。銀行口座、保険、年金、介護、不動産、NISA、葬儀といった観点から、終活と相続のリアルをあますところなく伝えている。お金の不安を解消するためのポイントを聞いた。
高齢者虐待の原因、ワースト1とは?
本日は「介護と終活」についてお話しします。年末年始、終活や相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
今はお元気な方でも、将来、介護が必要になるかもしれません。厚生労働省の発表によると、65歳以上の要介護認定率は18.3%。年齢別にみると、65~69歳は2.8%ですが、75~79歳は12.4%、85~89歳は48.1%、90歳以上は72.7%の方が要介護認定を受けています。
そもそも要介護認定とは、その方がどの程度介護が必要なのか、行政が度合いを審査して認定する制度です。要介護認定を受けて要介護度が決まると、原則1~3割の自己負担で介護保険サービスを利用できるようになります。
介護には大きく3種類あります。1つ目は、あなたの自宅で行われる在宅介護。2つ目は、デイケアやデイサービス、ショートステイなど、自宅に住みながら、施設に通って介護やリハビリを受ける通所介護。そして3つ目が、老人ホームに入居して継続的に介護受ける施設介護です。
多くの方は在宅介護を希望し、できるだけ「老人ホームには入りたくない」という意向をお持ちです。厚生労働省によれば、要介護・要支援認定を受けた方のうち17%が施設等へ入居しています(平成25年度調べ)。裏を返せば、介護が必要な方であっても8割以上の方が在宅介護を続けていることになります。
家族に無理をさせすぎない
在宅介護には、家族や親族のサポートが必要です。親を大切に想う子供の気持ちは、とても素晴らしいことですが、責任感の強い子供ほど、在宅介護を1人で抱え込み、介護疲れを起こしてしまうものです。
厚生労働省の調べによれば、養護者による高齢者虐待の相談・通報件数は毎年増加しています。虐待者の続柄は、息子が39%と最も多く、夫22.7%、娘が19.3%と続きます。虐待について、養護者側の要因は、介護疲れ・介護ストレスが最も多いです。
介護を受ける側と、する側とでは、「これ以上、在宅介護を続けるのは難しい」と感じる基準に、大きな差があるのかもしれません。「施設には入りたくない」と言っている親のために、介護をがんばろうと思う子供の気持ちが、いつしかパンクしてしまい、虐待や死亡事故につながってしまうこともあります。
介護を受ける人は、介護する人に対して、他の親族と分担して介護をしてもらうことや、ケアマネジャーに頻繁に相談したりするよう促して、無理をさせないことが大切です。
年末年始が近づいてきました。介護や終活について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続 お金の不安が消えるエンディングノート』を一部抜粋・編集したものです)