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仕事(ビジネス)をしながら親などの介護(ケア)をする、いわゆる「ビジネスケアラー」は、現在約300万人以上いるといわれます。その多くは、老親のケアに悩みながらフルタイムで働く中高年、現役世代のビジネスパーソンです。第二次安倍政権が“介護離職ゼロ社会”の実現をブチ上げたのは2016年の秋でした。企業への介護休業制度の法定義務化が話題になったものの機能不全に陥っており、毎年10万人もの介護離職者が増え続け、360万人もの人々が介護のために会社を辞めているのです。今回の記事では、老親に何かが起こったとしても、従業員が職場を離れなくても済むためには会社はどうしたらいいのか、具体的な方法論をお届けします。(NPO法人二十四の瞳、社会福祉士 山崎 宏)

社会福祉士は「よろず相談窓口」

 まずは、知る人ぞ知る……と言うか、ほとんどの人が知らない「社会福祉士」の定義から説明します。社会福祉士は、社会的弱者の生活の安定と充足を目的とする、相談援助の国家資格です。社会福祉士法が根拠法となります。介護保険制度がスタートする以前は、身体・精神・知的障害者がサービス対象でしたが、2000年以降は、高齢者全般と老親を持つ子どもたちも対象となりました。

 要は、「日々の暮らしで困ったことがあれば、誰でもどんなことでも、問題解決に向けて援助しますよ!」という存在が社会福祉士なのです。実際には医療・福祉・終活にかかわる相談が多いのですが、なぜどんなことでも対応できるのかというと、“よろず相談窓口”(ジェネラリスト)である社会福祉士は、地域の各分野専門家との連携があるためです。

 とはいえ、世間的には、社会福祉士が何をしているのかはほとんど知られていないと思います。日本に社会福祉士は27万人おり、医師の30万人に匹敵する数の多さですが、そのうち8割は特定の法人に勤務しています。高齢者施設、障害者施設、児童養護施設、そして医療機関です。そして15%が行政やその周辺(社会福祉協議会、ハローワーク等)、残りの5%が福祉系の学校で教壇に立ったり、民間企業等に在籍したり。ここまでですでに100%になってしまいますが、データ上は埋没してしまう0.1%ほどの社会福祉士が、全国各地で自ら事務所を構え、コンサルティングファームのような活動をしています(私もその一人です)。

 そんな社会福祉士のうちの誰かを確保できたとしたら、いつでも・何でも・気軽に相談に乗ってもらえるのみならず、実務の代行までしてもらえますから、実に便利です。円滑な暮らしや人生に資するプロとして、これを機に、知ってほしいところです。